
ヴェニスの商人というと思い出すのは浅利慶太さんが演出した、日下武史さんのシャイロックです。
舞台の真ん中にひざまずいた日下シャイロックが判決に「なぜ・・・・・」と腕を広げると、そこにスポットライト。
日下さんの頬を伝う一筋の涙・・・・・
浅利慶太氏の「私には、どうしてもシャイロックが悪者に思えない」という言葉。
受難者としてのシャイロック。
ショックを受け、感激しました・・・・・
それまでの、ヴェニスの商人はどんでん返しの面白おかしい劇、シャイロックは醜くて背を曲げた悪役、という概念を根底から覆され、シャイロック側からの視点、ものすごく感情移入しました。
あの劇を見てから、何年経ったでしょう?
今回の映画化は、jesterのAlways Best Movieのひとつ、『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォードが監督だし、アル・パチーノがシャイロック。
その上ジェレミー・アイアンズがアントーニオということで、かなり期待してみたのです。
まず最初のシーンでやられました・・・・・。
真っ暗な画面に白い文字。そのバックに チャプチャプチャプ・・・・ と静かな波音が聞こえるのです。
もう一気に心はワープ。

Ciao! Venezia! !
舞台劇でみるのでなく、実写で見るということは、ヴェニスの商人が本当に「ヴェニス」で暮らしているのを見られるって事なんですよね〜
まさにこれが実写映画の醍醐味!
マイケル・ラドフォードは脚本を書くとき、ヴェニスに移り住んで書いたらしいけれど、あのリアリティはさもありなんという感じです。
監督の愛情を感じました。
愛だよな、やっぱり・・・
しかも、古楽器の哀愁を帯びた、ちょっとオリエンタルな音楽の素晴らしいこと!
大げさすぎず、しかし盛り上げるところはしっかり盛り上げて、たっぷり音楽を使ってます。
そして、それだけでなく、鳥の声、水音など自然音も効果的に使い、音響が秀逸です。
台詞は多少の変化はあるにしろ、シェークスピアの美しい英語がきちんと踏襲されていて、耳に心地よかったです。
そういえば、昔、英語劇で、ポーシャの役をやったことがあるのを思い出しました。(爆)「mercy」って単語の発音が難しかったなあ〜〜
そして、セピアがかった画像に、16世紀のヴェニスの町が美しくよみがえります。
ヴェニスって現実にも不思議な町なんですよ。
普通観光地って、歩いていると「セットからでちゃったな」みたいに現代のリアリティに引き戻されちゃうけれど、ヴェニスは歩いても歩いても『ヴェニス』なの。
水路と石造りの家と小さな広場、階段、教会・・・・
しかも何世紀も前のヴェニスのまま!
家族Bと2人で夏中イタリアをふらふらスケッチ旅行したことがあるんですが、ヴェニスでは私が熱を出して1週間ぐらい寝込んじゃって、まだ小学生だった家族Bが必死に看病してくれたんですよね。
適当にネットで予約してたサンマルコの近くの安ホテルが最悪で、フロントに怒鳴り込んで部屋を替えさせたのもヴェニス。
そのホテルで家族Bが朝ごはんのパンをくすねて、毎朝サンマルコ広場で鳩に餌付けしてたのもヴェニス。
洗濯物をベットサイドのヴェネチアングラスのランプに引っ掛けて乾かしてたら、こげてくっついちゃって、焦りまくったヴェニス。
教会の階段に座り込んで、お昼のパニーニ食べてて、差し歯がぬけちゃったのもヴェニス。
何回もヴァポレット(船のミニバス)に乗り間違えて、全然違う島にいっちゃったり、逆回りのに乗っちゃったりして、最後は列車に乗り遅れそうになって走ったヴェニス・・・・。
・・・・ああ懐かしい。(爆)
閑話休題。(殴
この映画では、仮面をつけて歩いている人や娼婦まで、怪しく「ヴェニス」してるんですよ。
もう完全にタイムマシンです。
衣装も、小道具も、作り手の才能と入れ込み度が感じられて心地よかったです!
わ〜〜 書きたいことが一杯ありすぎで、1回で書ききれない。
これも続くになってしまいました。(ディジーのあらすじも続くなのに・・・・)
ごめんなさい・・・・・・というわけで、 続く。