2007年11月08日

Once ダブリンの街角で

これ、すごく良かったです!
jesterの今年のベスト10、いや、Alwaysのベスト10に確実にはいりますね。

ぴかぴか(新しい)映画全体が、一遍の詩のように美しく、心に響くものでした。ぴかぴか(新しい)

ダブリンの街角でギターを弾きながら歌を歌っているストリート・ミュージシャンのguy(どこにでもいるような男)。
嗄れた声を張り上げて歌う歌は一瞬「ボブ・ディランみたい。上手だけど、あまり好きなタイプのミュージシャンじゃないな」と思ったのに、聞いているうちにぐいぐいと引き込まれる。
まるで「魂の叫び」のような切ない歌。

once4.jpgその歌に吸い寄せられるようにgirl(女の子)がやってくる。
質素なジャケットにマフラーをぎゅっと結び、Big Issues(ホームレスに仕事を与えるために出版されている雑誌)を売り歩きながら、彼の歌に足を止め、聞き入る。

ちょっとKY(空気読め)なところがあるgirlなんだけど、掃除機を引っ張って歩く姿になんともいえない味わいがある。

チェコから出てきた彼女もまた、ピアノと歌で自己表現する人間であるという一面を持っていた・・・・


ダブリンはアイルランドの貧しい地域というイメージがあるけれど、そこに流れてきた東欧人というと、まさに底辺の暮らしだ。
(日本でならさしずめ建前は日本語学校で勉強しているはずが終日ラーメン屋さんで働いている中国から来た人たちと同じような・・・)

薔薇の花を売っている姿は「マッチ売りの少女」みたいだし、子供と年老いた母の生活費を稼ごうと必死で働く姿は「Dear フランキー」の母、リジーのよう。


おずおずとほんの少しずつだけれど心を寄せ合う二人をつなぐのは音楽。

once2.jpg曲が断片的でなく、全曲歌われることもあって、ミュージカルのようだといわれるけれど、普通のミュージカル映画とはまったく違う。
Beatlesの「Let it be」にも近い、まるで音楽を作る現場のドキュメンタリー映画のような感じ。

ただの挿入歌ではなく、BGMでもなく、音楽はこの映画で確かに主役の一人だ。
だからコンサートを聴いたような、「耳の満足感」がある。


だからと言って、ミュージック・ヴィデオでもない。
そこにはしっかりした人間観察の目がある。
ジョン・カーニー監督は「マイク・リーやケン・ドーンのようなミュージカルを撮りたかった」といっているが、確かにうなずける。
だから「心の満足感」もあるのだ。

二人ともどこにでもいるような若者。
着ているものは『プラダを着た悪魔』だったら変身前のださださなカッコ、と言われかねない(でもjesterは大好きな)シンプルでトラッドで地味な服。

それでも・・・・決して美形ではないのに、見ているうちにとても美しく見えてくる。
そのひたむきな生き方がいとおしく思えてくる。
once3.jpg恋愛映画といっても、寝台シーンは愚か、キスシーンすらないのに、それでいて二人の心の揺れが見るものにしみてくる。
ずっしりと、そして生き生きと呼びかけてくるものがある。
(おしっこくさい中学生や高校生受けを狙ってちゃらちゃらした甘甘の恋愛映画をつくってるどこぞの国の映画製作者たちにぜひ見て欲しい!)

ラストも、決して甘いHappy Endではないのに、見るものをHappyな気分にしてくれる、素晴らしい終わり方。
私たちの時が止まることなく流れていくように、彼らの生活もまた流れていくのです。

お金は全然かけてないけれど、人生っていいなと思わせてくれる骨太の秀作映画でした

guy役のグレイ・ハンサートはアイルランドでは有名な「ザ・フレイムズ」の一員ということですが、初めて聴く歌声でした。
ギター弾きのjesterですが、とってもギターが弾きたくなりました。
優しそうで誠実そうな目つきの人です。
(あんな「擦り切れた」ようなギターでもとてもいい音がでるのですね〜。音が悪くなるから表の板は絶対傷つけてはいけない、と言われてきましたが・・・・)

また、girl役のマルケタ・イルグロヴァはチェコのミュージシャン。
ちょっと大人っぽく見えて19歳には見えないけど、細い綺麗な声のミュージシャンで、女優としての演技もとても自然でよかった。

出口でまた即サントラCD買いました。
帰ってからずっと聞いてます。

ワンス ダブリンの街角で オリジナル・サウンドトラック

どの曲もとても良かったけれど、Falling slowlyという曲は、jesterのテーマ曲になりそうです。

   Take this sinking boat and point it home
   We’ve still got time
   Raise your hopeful voice you have a choice
   You’ve made it now


せつないです・・・たらーっ(汗)
絶対また見に行きます!


しかし、渋谷シネ・アミューズ、めちゃくちゃ混んでました。 
公開されて始めての水曜日ということもあったのだろうけれど、朝一の回、40分前に劇場についたら、もう階段を下のほうの階まで伸びる長蛇の列でした。
もちろん満員、立ち見も出てました。

年齢層は厚くて、初老の男性やサラリーマンもちらほら。

アメリカでは最初2館の上映から始まって、口コミでどんどん上映館がふえ、140館になったそうですが、日本でもあんな狭いところじゃなくて、もっと大きな画面で見たいです!


あ、そうだ、guyの役は、当初キリアン・マーフィがやることになっていたんですって!(DDさん用太字。当然ご存知でしょうけれど・・・・)
パンフレットに書いてありました〜
この監督さん、「19歳のカルテ」でキリアンを使ってますものね。
キリアンがやっていたらどうなっていたでしょうか・・・?



posted by jester at 00:12| Comment(19) | TrackBack(17) | ら行、わ行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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