2007年11月29日

マイティ・ハート/愛と絆 A MIGHTY HEART

ダニエル・パールさんの事件については本を読んでいましたし、それを『グアンタナモ、僕達が見た真実』『ウエルカム・トゥ・サラエボ』とか、『イン・ディス・ワールド』とかのマイケル・ウィンターボトム監督が撮ったといわれたら見に行かないわけには行きません。
(ただし、製作がブラピ、主演がアンジーというのに、jester的には少々不安が・・・あせあせ(飛び散る汗))

マイティ・ハート―新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死
この本の映画化なんですが(わ、この副題、ネタバレですわね・・・ま、現実に起こった事件なんで、ネタバレも何もないですが)
書いたマリアンヌさん(アンジーがやった役)はこの表紙の方。
ちょっと似てますよね?(アンジーのほうがケンがあるかも・・・)

2002年、パキスタンで、ウォールストリート・ジャーナルの記者ダニエル(ダン・ファターマン)が取材に出かけ、姿を消す。
妻マリアンヌ(アンジェリーナ・ジョリー)は妊娠中で帰国の日も近かったが、友人たち、地元警察などと共同して懸命の捜索をするが・・・・
というおはなし。

前半はリアリズム描写に徹していて、メロドラマ的展開はありません。
君の涙 ドナウに流れ のレビューでも、社会問題を扱った実話ベースの映画にメロドラマっぽいことを盛り込むのってどうなのかなって書いたのですが、この映画はこの辺はドライで成功していると思います。

捜索を進めるパキスタンロケも緊張感があってよかった。
こてこてに飾ったバスで渋滞した道路、ペンキのはげた壁、サラートの時間を知らせる放送、英語とパキスタン語の看板など、街の様子から匂いまで感じられるような(それはあたしだけか)映像でした。

それから地元警察のキャプテンを務めるIrfan Khanが真摯な感じで迫力がありました。
この人だけが頼りなんで正義の味方みたいに見えるけど、実はかなり高圧的に取調べやら拷問をしてましたが、それがあの国の実態ということなんでしょうね・・・
(ちなみに、彼はjesterが公開を心待ちにしている映画「The Namesakes」でおとうさんのAshoke Ganguliの役をするのです〜 トリみどりさん〜〜)

ウィル・パットン演じるランダル・ベネットCIA捜査官も正体不明な感じが怪しくてよかったし。(爆)


ただ、パール夫妻がジャーナリストであり、使命感をもってこの国に滞在しているっていう辺の説明がちゃんとできていないので、「バベル」みたいに(?)危ない場所に観光に来ている物好きな白人夫婦に見えかねないんですよね。

もうちょっと最初の部分で、ダニエルにジャーナリストとしての心意気みたいなものを見せてもらうともっと良かった。
ダニエルの人柄の良さや夫としての優しさは充分わかるのですが、そればかりわかっても・・・

彼は人種的にユダヤ人でしかもアメリカのマスコミに勤めているわけで、そんな彼がユダヤ人やアメリカ政府に非常に反感が強い場所にいるのだから、そこをあえて選んで取材をしている危機感みたいなものがあるはずなのに、それが最初にあまり伝わってこないんですよね。
だからその辺の心理的緊迫感もいまいち盛り上がってこない。


こういう社会派の映画は個人的に見る価値があると思うし、この作品もそうでした。
その辺は評価しているんですけれど、関連の本を読んでいて、映画としていろいろ期待していた分、それにそえなかったなと残念に思うところがありました・・・


********実際にあった事件を取り扱っているので、ネタバレもないかな・・・と思うのですが、もしダニエル・パール事件について全然知らない方で、映画をまだ見てない方には以下、ネタバレがあります。ご注意ください*******





この映画の原作のマリエンヌさんの書いたほうの本は読んだことがなくて、jesterが読んだのは『誰がダニエルパールを殺したか?』という上下2巻のこの本でした。

ジャーナリストが戦場で死ぬことは少なくはありません。
つい先日も残念なことにミャンマーで長井健司さんが射殺されましたし、少しさかのぼれば、イラクで橋田信介さんだって銃撃を受けた後、車ごと焼かれ亡くなった悲劇がありましたよね。

それにしてもこの事件は、彼が戦場ではない場所でイスラム過激派によって騙されて罠にかけられ、拉致され、ビデオによるメッセージを発した後に首を切られて殺害され、その様子までビデオにとられていたなど、非常にショッキングな事件でした。

映画では、事件をパキスタンの街並みや喧騒のなかに時系列で再現させていて、これをみることによって、より事件に関しての理解が深まり、その悲惨さに胸が痛みます。

ただし映画としての作りは・・・・どうなのかな・・・。

こういう事件があったということを忘れて欲しくない、知らない人には知ってほしい、という意図は成功しているものの、ただ材料を並べただけという感じで、関連本などを読んでいない人にはドキュメンタリーとしての背景情報も不足しているし、かといって夫婦愛とか絆を描ききれているわけでもなく、どうもどっちつかずな感じが否めませんでした。

上にも書きました、イラクでなくなられたジャーナリスト橋田信介さんの「イラクの中心でバカとさけぶ」などを読んでも、こういった危ない地域に出向くジャーナリストって、「いつ死んでもおかしくない」っていう覚悟みたいなものを持っているし、命を危険にさらしても、多少は法を犯してでもスクープを撮りたいっていうジャーナリスト根性みたいなものがあると思うのです。

それは家族も承知のこと。
ましてや自身がジャーナリストでもあるマリエンヌが覚悟していなかったわけがない。

それなのにマリエンヌはジャーナリストに見えない。ただうろうろ家の中を歩いて、ヒステリックに怒鳴ったりしたかと思うと、仏壇に「な〜む〜みょう〜ほう〜れんげ〜きょう〜」なんて祈ったり、号泣するシーンを延々と見せられたりでは、見ているほうとしては戸惑ってしまいます。

もしかしたらマリエンヌさんが本当にそういう人なのかも、という線もありですが、ウィンターボトム監督ならもうちょっと別の撮り方を出来たのではないかしら、と思うのです。
その辺、もしや『製作;ブラピ』『主演;アンジー』の抑圧があったのかな・・・というわけで、不安な予感的中(?)でした。

ユダヤ人であること、妻が妊娠5ヶ月であること、などいろいろな事情を慮って尚、取りたいスクープであり、妻は覚悟の上で夫に取らせてやりたかった。
その辺の描写ももっとほしかったな。

それに、邦題の副題のように夫婦の愛情と絆を細やかに描いているのかというと、それを求めてみた観客はがっかりするだろうなと思います。
甘いシーンはほとんどなくて、特に前半はアンジーが困った顔をしてうろうろしつつ怒ってる、というシーンがほとんどですから。
その辺を強調したいなら、二人の回想シーンは後半でなく前半にもう少し入れるべきだったと思います。


アンジェリーナ・ジョリーは熱演でしたし、集客率を上げるためにはかなり貢献していると思われますが、行方不明の夫を心配して捜す古気丈な妻には見えたけれど、ジャーナリストには見えなかったです・・・。

マリアンヌというより、アンジーそのものに見えてしまったかも・・・
(とはいえ、アンジーはご本人と交流があるらしいので、もしかしたら本当にマリエンヌ・パールさんがこういう人なのかも知れず、それをアンジーが忠実に演技してるとしたら、アンジーのせいじゃないですけれど・・・)



最後のテロップにあった、ダニエル・パールの両親が「異文化相互理解」のための運動をしている、というようなこと、そして多分マリエンヌ・パールさんが著書で本当に訴えたかったことが、きちんとメッセージとして受け取れるようなつくりにして欲しかった。

じゃないと『見た人は「恐いね」といってランチを食べに行く』だけの映画になってしまいますもの。



ただ、と〜〜っても局地的・個人的には、マリアンヌが夫との思い出を回想するシーンで、パソコンに「Ferryboat to Elephanta」の文字のあとででてくる映像が、ちゃ〜んとインドのムンバイの突先のインド門から、エレファンタ島(石窟寺院がある島)へ行くフェリーの画像だったのにはプチ感激しました。(殴

あのシーンのために、ちゃんとあそこまでいってロケしたのね〜
(jesterも数回あのフェリーに乗ったことがあります♪)





posted by jester at 12:27| Comment(4) | TrackBack(1) | ま行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。