2008年02月19日

潜水服は蝶の夢を見る LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON

e0093293_19195799.jpgいままでだったら亡くなっていた重篤な患者が、先進技術によって奇跡的に生きながらえる。

しかしジャン=ドミニック・ボビーの場合、体の機能は左目を残してすべて奪われたLocked in syndrome状態でだった・・・

動かぬ体に閉じ込められた正常な精神。
それによって彼に与えられた「時」は彼にとっては苦悩の時であっただろう。

しかし彼の思考したことや彼の存在は、わたしたちにたくさんのことを気づかせてくれる。

まさに彼の「時」は、彼に与えられただけでなく、そのほかの人類に与えられた祝福だったのかもしれない。

  ☆☆☆☆−でした!


去年、マチュー・アマルリック・ファンのnouilles-sauteesさんのところで記事を読んで以来とても気になって、jesterも原作を読んだりして待ちわびておりましたが、(その様子はこちらの記事にかいてあります♪)やっと日本でも見る事が出来ました。

潜水服は蝶の夢を見る
アルファベットを順番に読み上げてもらい、使いたい文字で瞬きするという方法で、20万回の瞬きを繰り返して書かれた本。

この本を読むと、書いた本人のジャン=ドミニック・ボビーとそれを手伝った人の、気が遠くなるような生の営みにまず感嘆します。
人間が生きるということを考えさせてくれます。
(原作のレビューはjesterの読書ブログのこちらの記事です。)

でも映画を見ると、よりそれがクリアになりました。



雪   雪   (以下、映画の内容に少し触れています。未見の方はご注意ください!)




冒頭シーンで、観客はまず、「ロックト・イン・シンドローム」というのがどういうものなのかをつかのま体験することになります。

ぼやけた視界、そして目をそらしたいのにそらせない医者のヒゲ面の毛穴まで見えるドアップ。
自らの拍動、呼吸音の大きさが、患者の不安で混乱する気持ちを伝え、息苦しくなってくる。

このシーンを見つつ、思わず自分も目をぱちぱちさせたり、舌を動かしたりしながら、潜水服(正確には頭からすっぽり被るタイプの潜水用のヘルメットのようなもの)に入っているような患者のつらさと、それに引き換え今の自分にはどれだけのことが与えられているのかがじわじわとわかってくる。

初めて綴った言葉。
「ぼくは死にたい」

それを書き留めた言語療法士アンリエットが「そんなことをいうなんて失礼よ!」といって立ち去る。

閉まったドアを見つめる、絶望。

永遠だと信じていたのに、もろく崩れて海に戻る氷河のように、冷たくゆっくりと崩壊していく精神。

そんな中で、人はどうやって人として生きのびていけるのか。

昔、飛行機でジャン=ドミニック・ボビーが席を譲り、その後ベイルートで人質になって暗い地下に5年間閉じ込められた友達がやってきて彼に言います。

「わたしの体験はきっとあなたの助けになる。
わたしは幽閉されている間、ずっと毎日大好きなビンテージワインの名前を思い出して過ごしていた。
だから気が狂わないで過ごせた。
人間性にしがみつけば、生き抜ける


そしてジャン=ドミニック・ボビーが見つけた答えは、「瞬きによって、自分の心を文字として表現すること」。

眠れぬ夜、長い長い待ち時間に、書きたい事を考えてそれを暗記しておき、あとで時間をかけて書き取ってもらう。

麻痺した肉体に閉じ込められた精神が自由に羽ばたく様子を、選び抜いた鮮明に描写して・・・・


90歳を過ぎた父とのひと時の回想、「人は皆子供だ。認めて欲しいのだ」なんて言葉が心にしみます。
そしてその父がむせび泣く電話が切ない。


でも彼の想像は美しく、時にはセクシーに展開する。

女性と一緒にオイスターを食べ狂うシーンでは、思わずオイスターを食べたくなりました。(マチューに食べさせてもらって(殴パンチパンチ


クリスマス彼の環境はまた彼にとっては幸運だったと思いました。

サポートしてくれる元妻や子供たち、言語療法士のアンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)や女性編集者のクロード(アンヌ・コンシニ)、友人たちに恵まれ、美しい海辺の病院という環境で過ごせたからこそ、心をより自由に飛ばせられたのかもしれないと思います。


ぴかぴか(新しい)そして役者さんたちがまたいいんですよ〜〜!
マチュー・アマルリック!
病気になる前の知的でちょい悪なカッコよさから180度転換して、目をひん剥き、口を曲げてよだれをたらし、それでも必死で生きている患者の演技がすごい!

父親役のマックス・フォン・シドーの存在感も大きかった。息子にひげを剃ってもらう時の「若い頃はさぞかし遊んだんだろうな」というセリフも彼だったら納得。
そして電話で彼が泣くシーンではそのつらさに思わずもらい泣きしました・・・

それからアンリエットはマチューとは一緒に「ミュンヘン」に出てて恐ろしかったマリ=ジョゼ・クローズだし、「灯台守の恋」のCamille役だったアンヌ・コンシニが女性編集者のクロードをやってます。

そのほかに、元妻のCéline Desmoulinsなど、女性陣はみんな大人っぽくてとても素敵。


リゾートそれから、色調を抑えた画面がシックで綺麗です。

ファンションも、さりげなくシンプルなのがいいの。(日本女性のファッションはまだまだ作りすぎててわざとらしいとおもうjesterである)

白衣の下のチェックのシャツ、シンプルな柄物のワンピース、飾り気のないざっくりしたセーターやカーデガン・・・・シックです。
(しかしお医者さんたちのチェックのシャツに柄物ネクタイというのは、どうなんでしょう・・・)


猫見終わったあと、しみじみ自分がどれだけの奇跡に恵まれているのかを感じました。
言葉がしゃべれる幸せ、歩いて好きなところへ行ける幸せ、本を自分の手でめくって読める、映画を見に行ける、ランチを食べられる、どれもどれも、実はすごいことなんですよね・・・・

大切にしなくては!
(もし脳卒中になっても、左目だけは動けますように・・・)

・・・そんなことを素直に思うことが出来る映画でございました。

アカデミー賞でいくつかノミネートされてますが、幾つ受賞できるか楽しみです♪





posted by jester at 21:18| Comment(20) | TrackBack(8) | さ行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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