
「君が正しかった。ぼくが間違っていたよ」
心の中では何回も繰り返すのに、
いえなかったたった一言の「ごめんね」
そのために離れてしまった・・・心の友。
時は流れてしまったけれど・・・・
今は会うこともかなわないけれど・・・
それでも、いまからでも間に合うのだろうか。
「ごめんね」を君に言うために、今、走るよ。
☆☆☆☆☆でした!!
この映画も大事にしたい1本。
今年は年初めからあたりが多くて嬉しい♪
「チョコレート」「ネヴァーランド」「主人公は僕だった」のマーク・フォスター監督がアフガニスタンを主な舞台にダリー語で撮った作品。
アメリカの映画もここまで来たのだ、と感慨を深くしました。
(『The Kite Runner』という立派なタイトルがあるのに、このめちゃくちゃセンスの悪いベタな邦題はなんなのよ〜〜! と怒っておりました(汗)、どうぞこの邦題にだまされないでくださいませ!)



主人の子供である年上のアミールと使用人の子供であるハッサン。
当然アミールのほうが強い立場なのですが、実際に「心が強い」のはハッサン。
支配者階級のパシュトゥーン人の裕福な家系の子供であるアミールと被差別民族のハザラ人であるハッサンは、本来なら遊ぶことも忌み嫌われる関係だけれど、アミールの父は二人の友情を認め、二人は上下関係はあるものの、仲良く遊んでいる。
凧の糸を切りあう「喧嘩ダコ」(?)では二人は信頼しあういいパートナー。
そして、ハッサンは縁の下の力持ちの『Kite Runner』(糸が切れた凧を取りにいく人)の名手でもあります。
(Kite Runnerって、見る前は「凧の上手な揚げ手」ぐらいの意味かなと思っていましたが、映画中に説明があって、こういう意味らしいです)
家の裏のざくろの木の下は二人の秘密基地。
幹に友情の言葉を刻み込み、アミールがいつも文字の読めないハッサンに本を読んであげる場所。
50回もハッサンが読んで欲しがったという物語のタイトルが、後で効いてきます。

「ニュー・シネマ・パラダイス」のトト少年の笑顔を彷彿とさせてくれるような、純粋な優しい笑顔。
上手い画像がみつからなかったのですが、日本にもいそうな、純朴で世話好きな少年。
ひたすら信頼している子犬のような瞳に、すごく癒しを感じます♪
対するアミール君は石原良純の少年時代、という顔だちなんでございますが、どこにでもいる金持ちのうちの男の子という感じ。
さて、何事も忠実で一生懸命なハッサンにたいし、アミールは勇気がなくて、それに対する劣等感もあり、複雑。
年上の少年たちの陰湿ないじめにも、顔を背けず立ち向かう立派なハッサンに対して、アミールはいつも陰に隠れてこっそり見ている・・・
臆病な自分に対する自己嫌悪は嫉妬とあいまって転化され、アミールの中にハッサンへの憎悪に変化する。
アミールはいつの間にか、ダークサイドに陥ってしまう・・・・
この辺で、小心者アミール少年の自己嫌悪と胸の痛み、嫉妬の苦しさと憎悪は、世の大人&ダーズベイダーが(?)かみ締める苦い味でもあります。

アミールは父とともに国外に脱出。
そしてアメリカに移住します。
自国を遠く離れた民族が他国で集団を作って暮らす様は「その名にちなんで」にも描写されていましたが、興味深いものがあります。
彼らがアメリカで移民として暮らしている間に祖国ではソビエトに蹂躙され、疲弊しきったアフガニスタンを、今度はタリバンの暴力が支配し始める。
それも遠い国の話になってしまったアミールに、ある日一本の電話がかかる・・・・・
今度は君のために、僕は『Kite Runner』になれるのか。

アミールの父、ババ(ホマユーン・エルシャディ、『桜桃の味』の人)のソビエト軍に向かう姿も毅然としていて、かっこいい!
息子としては誇らしい父親像でしょう。
アミールの叔父のラハム・ハーン(ショーン・トーブ、「クラッシュ」の店主さんや「マリア」のお父さんのひと)の理解ある態度も安心できます。
落ち着いた演技もいいけど、この人の声が好きです。
大人になったアミールは「ユナイテッド93」でテロリストが印象的だったハリド・アブダラが演じてます。
普通の格好をしていると、濃い顔立ちでイスラム系の顔に見えるのに、ターバンをしてヒゲをはやした途端に、コーカソイドに見えるのはなぜ??(爆)

「Hidalgo」(オーシャン・オブ・ファイアー)の王子さまですよ!
「オレは砂漠の誇り高き民族だ!」という「Hidalgo」あの時もカッコよくて惚れたけど、今回も渋くてかっこいかったです!
(とまあ、これはjesterしか興奮しないだろうポイントではありますが・・・・)
脱出劇後半はちょっと疑問もあったけど、テンポも悪くなくて、はらはらどきどきもいたしました。
あと、音楽もよかったです!
「ナイロビの蜂」や「ボルベール帰郷」などを担当したアルベルト・イグレシアス。
中東っぽい音楽に混ざって、画面をでしゃばらすぎずに守り立ててました。
音楽がいいので、音のいい映画館で、また、空飛ぶ凧のシーンもスピード感があるので、ぜひ大きい画面で見たい映画でもあります。

と、アフガニスタンについても知識を与えてくれます。
(実際の撮影はアフガニスタンから国境を越えた中国の新疆ウイグル自治区で行われたそうですが)
人間、ダークな部分は誰しもあるけれど、人を動かすのは、ただひたむきな愛なんだなあ・・・
「やっぱり最後に愛は勝つ」なんだなあ・・・
なんてベタな事を素直に思える、後味のよい映画でした。
The Kite Runner

発売当時から海外の書評で多く取り上げられ「感動した」というものが多かったのですが、jesterは未読でした。
著者のカーレド・ホッセイニはカブール生まれ。
外交官の父と海外にも暮らし、クーデターとソビエト侵攻のあとアメリカに亡命し、医者の資格をとり、小説家にもなったという、アミールと被る経歴の持ち主。
自伝的要素もあるのでしょう。
映画を見たあとすごく読みたくなり、早速アマゾンで注文しました。
あと、同じ著者の「A Thousand Splendid Suns」というのも評判が高いらしいです♪
君のためなら千回でも

しかし、この邦題、なんとかならんのか・・・・
いや、確かにそういうセリフは出てくるけどさあ・・・・
恥ずかしくなるじゃん・・・