嵐に襲われた時、あるものは凍りつき、あるものは逃げ惑う。
しかしあるものは風を受け、Eagle(鷲)のように翼を広げて飛び立つのだ・・・! とにかくケイト・ブランシェットがいい!彼女の演技にオスカーをあげたかった・・・・
☆☆☆☆+でした♪
前作の「エリザベス」はなんか感情移入するほどには入り込めなかったおぼえがありましたが
(9年前海外にすんでいた頃で字幕なしで見て、まだ英語に耳がなれていなかったからなのか? それでストーリーを追うのに必死だったのかも??)
今回は抵抗なく感情移入できました。
それもこれも、ケイト・ブランシェットの演技力ですよ〜

なんて上手い女優さんなんでしょう・・・!
その孤独さ、不安、重圧、高慢、嫉妬、知恵、etc.・・・・すぐれた表現力にただただ感嘆してみちゃいました。
(以下、ストーリーについて語っています。未見の方はご注意ください!)

例えばですが、ローリー(クライヴ・オーウェン)に惹かれるシーン。
ローリーが「 Pure, naked, fragile 」な Hope について語っているのを聞いているケイトの表情がすばらしいんです。
彼女が彼の言葉を聞くうちに、海の風を感じ、水平線や新大陸を見ているのが伝わってくるんですよ。
自分にない自由に強く憧れ、そんな風に生きてみたいと、所詮かなわぬ思いを持ち、もっと話を聞きたい、もっと聞かせて欲しいと切望する。
そしてそんなものをもたらしてくれるこの男についてもっと知りたい、近くにいたい、と願う。
それを表情だけで、もっというと『視線だけ』でみごとに表してました。
『いつか眠りにつく前に』で、ハリスとアンが恋に落ちる過程が描けてないって書きましたが、まさにあの映画に必要だったのはこういう微妙な人間の心の揺れの表現だったと思うのであります。
暖炉の前で言い出しにくそうにローリーにキスを所望し、
「I die・・・」なんて・・・・
なんて切なくてロマンティックなラブシーンなんでしょう・・・
『国を背負って、国と結婚した』エリザベスの孤独な心を思うと泣けました・・
でもそういうものだけじゃ甘すぎて、しらけてしまうのだけれど、『エリザベス;ゴールデンエイジ』ではハードな部分もしっかりしているので、ただべたべたしているんじゃないんですよ。
二人で馬に乗って追いつ追われつの美しいシーンやらキスシーンなんてのは実はほんの少しだけ。
映画の大半は、スコットランド女王メアリー・スチュアートの王位継承権の主張とエリザベスの暗殺計画&処刑、そしてその裏に潜むさらに深い陰謀や、やがて無敵艦隊とのアルマダ海戦につながっていく、イギリス(プロテスタント)とスペイン(カトリック)の宗教対立がきっちり描かれているので、緊張感があり、見ていて飽きません。
当時は大国の王が「この国をとって娘を女王にしよう」と思えば感嘆にひねりつぶされる弱小国であったイギリス。
それを背負っている『女王』とはいえ、実父は実母を『魔女』として殺し、それ以来ロンドン塔に幽閉されたりしながら常に「正当な王位継承者ではない」と後ろ指指され、正当な王位継承者であるとされる従姉妹のメアリーとの絶え間ない軋轢やら暗殺の恐怖に苦しみながら、「やるしかないでしょう」と必死に背筋を伸ばしているエリザベスの苦悩が痛いほど伝わってきました。
だからこそ、最後で、よろいを脱いで女王の印の指輪を再度指に嵌め、はだしで岸壁に立ち尽くすシーンで、
その歓びを一緒に味わえたんだな〜と思います。
もしイギリス国民だったら、愛国心を喚起させられますよ!(
逆にスペイン人は嫌〜〜な気分になったでしょうねえ・・ この後うちの国は制海権を奪われて落ちぶれたんだ〜って思って。)

映像も素晴らしかったです。
映画館で見ようと思い立ったひとつの要因は
『神風』が吹いちゃう、無敵艦隊とのアマルダ海戦を迫力ある画面と音で見たい、というのがあったのですが、これが期待していたのとは違いました。
『マスター&コマンダー』みたいに、こっちも身を沈めて砲撃を避けたくなるほどの音響かなと思っていたのですが、まるで遠くから見ているように音が小さく、逆に被っている音楽のチェロの音なんかのほうが砲弾の音より大きかったりするんですよ。
つまり
狙いが全然違うんでしょうねえ。
そういうのが好きな人はがっかりしたかもしれませんが、
jesterはこれはこれで良かったです。あの水中から炎の出ている船やら、落ちて泳いでる人や馬(白馬がかわいそう・・・と思ってみていたら、ちゃんと海で泳いでましたね。)を撮る画像も夜の透明な海から見てる感じが絵画的で芸術を感じさせられ、秀逸でした。
戦闘シーンを迫力出して撮るのではなくて、少し離れたところから突き放して見るような感じが、
今時の戦闘シーンが売り物の映画と違って「美しく」見られた感じが致しました。どこでも言われてますが、衣装の素晴らしさはさすがにオスカー級ですね!
お城の中のセットも素敵でした。

しかし、ケイト・ブランシェットには本当に脱帽です。
というか、以前から脱帽していたし、最近の『あるスキャンダルの覚え書き』の華奢な危うさにも帽子を脱ぎっぱなし
一緒にカツラまで(?)状態だったのですが・・・
『アビエーター』の時は、「上手いし、キャサリン・ヘプバーンに似てるけど、声帯模写じゃないんだから、声まで無理することないんじゃないの?」なんて密かに思ってました。普段は低い声なのに無理して出してるので、ちょっと鼻にかかった高い声になっているのが耳障りに感じられて。
だもんで、この映画のトレーラーで彼女がほえているのを見たときは、もしかしてまた『アビエーター』系の演技かなあ・・?と思っていたのですが、今回はそれを大きく超えてたと思いました〜
鎧に身を包み髪も(カツラだけど)振り乱して白馬に乗っての兵士に演説では
「ガラドリエル様!ついに御身自ら戦いに・・・・」と映画を勘違いしつつ感涙。

最後の聖母子像のような輝きにもひたっちゃいました。

その他の俳優さんも♪
クライブ・オーエン、きちゃない海賊が板についてて、やばいです。
『キング・アーサー』で見たときは「首のたるみが〜」とかぶちぶち文句言っていたのに、だんだんにいろいろ見てるうちにちょっとカッコよく見えてきてしまったぞ・・・

ローリー卿にドレイク提督のイメージをプラスして作られた役柄かなと思うのですが、なかなか野性味が感じられて良かったです。
ベスと踊るシーンでは「こら、おめえはどこ持って持ち上げてるんじゃ〜」と突っ込んでましたが、もちろん、あれはエリザベスが「ほれ、このように」と手を取って指導したとおりに踊ってたんですがね

それと、『プロヴァンスの贈り物』では「マリオン・コティヤールより綺麗じゃん」と思っていた
アビー・コーニッシュが御付の侍女べス役で、とても綺麗でした。
『プロヴァンス』の時の、Gパンにタンクトップのカリフォルニア娘も良かったけど、やっぱりこの人好きです。
最近見た誰かに似てると思ったら、ライラのコールター夫人(二コール・キッドマン)だわ(爆)
そうそう、その『プロヴァンスの贈り物』にもでてた
トム・ホランダー 。
『カリブ』とか『プライドと偏見』など、どちらかというと道化方のコミカルな役が多かったのに、今回はメアリの監視役というシリアスな役でした。
さいしょあららと思ったけど、冷酷な目つきが結構良かったのでは。
他にもウォルシンガム役の、
ジェフリー・ラッシュは前作同様、演技達者。
今回は思いっきりケイト・ブランシェットに張り倒されてて笑えましたが、あいかわらず腹に一物ありそうな重厚な演技でした。
それから『グッド・シェパード』でマット・ディモンのエキセントリックな息子役だった
エディ・レッドメイニーが、暗殺者の重要な役でドアップで出てましたね♪
あいかわらずエキセントリックな雰囲気で、替えがたい味わいをもつ役者さんです。
陰謀に振り回され処刑されちゃう(処刑シーンは恐かったけど)
サマンサ・モートンの「戸惑いと恐怖と硬直」の演技も上手だった!
それとフェリペ2世をやった
ジョルディ・モリャも良かったです♪
しょっぱな、髪型とヒゲ面で一瞬ジェラルド・バトラーかと騙され(最近目が悪いので)それ以降、何となく注目してみちゃいました。

実はこの映画、見る前に「どうしようか」と迷ってました。
9年前にみた「エリザベス」には、上にも書きましたが、その頃はそれほど感激もせず、「普通」だったし。
ケイト・ブランシェットは気になるから見たいけど、ヘレン・ミレンのテレビシリーズの「エリザベス」も2本とも見たし、今さらエリザベスでもないかもなあ・・・なんて後回しにしていたのでした。
ただただ政治抗争や戦闘シーンが続く重いだけの歴史物も気が向かないな〜なんて思って。
だけど見に行って良かったです。
一人の女性の内面が繊細なタッチで描かれていて、単なる歴史物以上でした。
全然期待しないで行ったので、かえって拾い物をしたっていう気分でした。
やっているうちにもう一回見に行こうと思ってます♪