
厳密に言うとジョージが良いというより、というよりERにでてくるアウトロー風味の小児科医、『ダグ』のキャラクターが好きだったのですけど。
その後、ジョージ・クルーニーは人気が沸騰し、『アメリカ女性が診察してほしい医者トップ1』(小児科医だってば)(爆)に輝いたりして、数々の映画に出ましたが、jester的にはそれほど印象に残ったものはなく・・・
特に『オーシャンズ・シリーズ』は駄目だったんですよね・・・わたくし。
(最初の11はまあ良かったけど、12はつまんなくて・・・13は見てません。)
で、この映画はどうだったかというと、いろいろな意味で彼にはフィットした役だったのではないかと思いました。
Law Firmとか会社の法務部とかに興味があるので、その辺のむなしさとかが描かれている部分は個人的には面白かったです。
jesterのお好み度、☆☆☆−でした。
ところで、『フィクサー』という邦題ですが、ジョージ・クルーニーの敏腕フィクサー振りが見られるのかというと、そんなことはなく、ある『MICHAEL CLAYTON』(原題)といううだつのあがらぬ雑用弁護士が、自分の意思に反して、事件に巻き込まれる様子が描かれている映画です。
相変わらず邦題のつけ方がヘタクソだし、「配給会社の人たち、ちゃんと映画見たのか?」という宣伝でしたね。
****以下、映画の内容には触れてます。未見の方、ご注意ください!****




Fixerというのはfixする人、修理工のことですが、転じて尻拭い屋、黒幕というような意味も持ち、弁護士に使われる場合はかなり蔑称というか、馬鹿にしたような意味合いを持つとjesterは思うのですが、クルーニー演じるFixerは確かに『雑役弁護士』で、600人もの弁護士が働く巨大Law Firmでもどちらかといえば、『窓際族』。
「こんな雑務より法廷弁護士をやりたい。オレは敏腕だったじゃないか」とボスにいっても、
「ああ・・・だが君よりもっと敏腕なのがいっぱいいるのでネ」とにべもなく却下され、私生活ではセカンドインカムにとはじめた飲食店がうまくいかずに、それで出来た借金で首が廻らず、ぴかぴかの車は実は会社のリース。
離婚した妻との間に出来た子供を大切にしているけれど、賭けポーカーから脚をなかなか洗えず、借金はどんどん増え・・・
とまあ、八方塞の毎日。
同じ弁護士事務所のトップであり、ある大企業に対する集団薬害訴訟の被告側弁護をしているアーサー(トム・ウィルキンソン)がおかしくなったので見てきてくれや、といわれていってみると、アーサーは
「もうこんな生活は嫌だ! こんな訴訟の弁護はくそだ!
悪いのは企業のほうなんだから、これからは原告側の見方をするんだ! なんしろ可愛いアナがいるんだから!!!」
などとほざいて洋服を脱ぎ始めたりしておりまして、なんとかなだめようとするマイケル(クルーニー)ですが・・・・
という展開でございます。
マイケルが決してヒーローではなく、大企業の歯車のひとつとして正義感なんかとうの昔にどこへやら、とりあえず仕事をしてお金をもらえれば良いや、という現代のサラリーマンの悲哀をいっぱいに抱えたよれよれ男なんですね。
それがどうもジョージ・クルーニーにぴったり・・・とかいったらファンの方には怒られそうですが、なんとなくアウトローっぽい(といっても文字通りマイケルは in law なんだけど)主流から外れちゃった雰囲気が似合っていたと感じました。(ほめてるつもり・・・)

『ディボース・ショウ』の時も思ったけど、クルーニーって『やり手の弁護士』が似合わない(殴)と思うし、ついでに言ったら『CIA職員』『正義感にあふれるジャーナリスト』とかもなんかうそ臭い気がしてしまいます。
彼はどこか外れたところがある感じの役が良いんじゃないかと思うんですよ。
作品的にはjesterは嫌いでした(だってホラーだもん)が、『From Dusk Till Dawn』の悪役って、見た当時は「ダグが!」と思ったけど、今考えると結構彼に似合っていたと思います。

フランスパンを腕いっぱいに抱えてダウンタウンをふらふら歩いている姿が幸せそうでした。
アーサーは精神を病んで初めて、やりがいのある仕事を自ら始めたのですね。
それも悲しいですが。

カレンも多分ロースクールを出ている弁護士で、強面に企業のフィクサーとして法務部長をしているけれど、自分の中の正の部分が捨てきれず、それが己の心を責めさいなんで、身体症状としてでてしまうのが、また悲しい。
あそこに昇りたい!とハシゴをかけ、必死に努力して登りつめてみたら、違うところにハシゴをかけてたと気づく。
でももうここまで来たら降りられない・・・
いやいや、そう思い込んでるだけで本当は降りられるのにね。
アーサーみたいにならないと降りられないなんて。
哀れなエリートたち。
しかし・・・アカデミーの助演女優というと、もっと派手な演技の人がもらうという印象があったので、思っていたより静かな演技だったと感じました。
だ〜〜れも幸せな人がでてこない映画なので、最後だけは北米での興行成績を上げるためにもハリウッド的に仕上げてみたのでしょうか?
まあ最近年のせいか、後味ワリイ映画が苦手になってきて、「映画見てるときぐらい、夢見させて〜騙して〜」状態のjesterなので、それはそれでよかったのですけれど。
ただし作りがちょっと不親切だったかなと思います。
最初にアーサーのわけのわからん独白が流れ、トイレでハッとわきの下に手をやって「この制汗剤、全然効かないじゃないの!」(勘違い)
と焦ってるカレンやら、広東語が流れる怪しげな倉庫内の賭けポーカー場が次々映るので、
「う〜〜む、これはきっと全部大切な伏線なのだろうなあ」と必死でおぼえていると、その後の『4日前』で始まる話でなかなかほぐれていかないんですの。
最後にはあ〜〜そうだったのね、と思わせてくれるけれど、中盤は「あの最初のシーンにどうつながるのだろう」とfixしようとして疲れてくることも確かです。
すっぱり最初の部分を忘れ去って、『4日前』から見たほうがかえって映画を楽しめたりして。
それとね、アーサーにはあれほど巧妙に攻撃したやつらが、マイケルにはいくら焦っていたとはいえ、ドカン!かい??
というのがどうも腑に落ちなかったjesterでございます。