2008年05月01日

つぐない Atonement その2


「つぐない」のレビュー、前回からの続きです。

劇場で買ったパンフレットが素敵だったんですよ。
表紙が白のエンボス加工で、いかにも乙女心をそそる(爆)華奢なデザイン。
中は写真いっぱいです。(右がパンフレット、左はペーパーバックの原作本です。原作はこの表紙じゃないのもありますが、そっちは少し値段が高いです)

個人的には、キーラの写真を減らして、もうちっとマカヴォイさんのをたくさん使って欲しかった・・・・パンチ
でもタキシード姿で眉根を寄せてないアップがあったので、つい買ってしまいましたが。

それとダンケルクのシーンの見開き写真も素敵です。
あのハンディカメラを使った長回し、壮大な風景やら人物を続けてとっていたのがとっても印象的でした。
まるで自分があの砂浜をさすらっているような幻覚におそわれてくらくらとしました。


そういえば、出だしの屋敷のミニチュアの人形の家と、そこから出てくる動物たちの列が広がるブライオニーの部屋、そして重なるタイプの音、少女の性格や生活を描写しているすごい上手いイントロで、あれも印象的だと思いました。

タイプの音、蜂の羽音、ロビーの母が車をたたく音などがブライオニーの心象と重なり、音楽とからまっていくところも上手だな〜と思いました。


あと、最後のインタビューのシーンのインタビュアー、どこかで見た・・・と思ったら、え? アンソニー・ミンゲラさん? 
エンドロールで確認したらやはり彼でした。
あれが映画に出た最後なんですね・・・
彼の監督した作品は好きだったので、お亡くなりになってとても残念です。


さて、前回のストーリーについての続きです。

この原作には、セリフにならない「心模様」がたくさん盛り込まれているのですが、映画はその原作に忠実につくられているため、説明されていない心模様、演技だけで表現しようとしている精神の動きがたくさんあるんですよ。

その辺、説明的にセリフにされてしまうよりずっといいのですが、原作を読むと味わいが深くなります。

なので、原作読了後にもう一回見に行ってからレビューを書こうかなと思っていたのですが、まだ2回目にいけてません(汗)



****以下、原作、映画の内容には触れてます。未見・未読の方、ご注意ください!****



噴水ドボン事件の背景ですが、まずあの花瓶はとっても大事な家宝だったらしいです。
そのいわれが原作では長々と綴られてます。

そして、花瓶が壊れてしまった時、彼はシャツのボタンをはずし始めるのです。
それをみたセシリアは、彼が破片を取りに噴水に入る気だとわかり、
「こないだはうちに来てはだしになったりしたあげくに・・・もう耐えられない!」 (使用人ぶるのはもうやめてよ!)
と思い込み、か〜〜っとして思わずサンダルを蹴り脱ぎ、洋服を脱いでドボン!と飛び込んだのでした。

(前の記事でも書きましたが、セシリアとレオンとロビーは子供のころからずっと仲の良い親友で、大学に行くまでは身分の差など感じずに楽しく過ごしていたのです。)


それを窓から見ていた夢想家のブライオニーは思います。
「おぼれて、助けられて、その後は結婚の申し込みよね。」
実は彼女が以前(10歳の時)、これをやったんですよね、ロビー相手に。
映画でもそのシーンがありました。
原作ではさらにこの救出劇のあと、ブライオニーが
「I love you」とロビーに告白しています。


さて、手紙のシーンはこうです。

ドボンのとき、いろんなところが濡れて透けて見えてしまい、それが頭から離れない状態で、謝りの手紙を書くロビーの机の上にはGray's Anatomyの本が。

これって、あの話題ドラマではなく、昔に書かれた医学書なんですけど、その1546ページのthe vagina の項目がございました。彼は医学志望の学生ですもんね。
そのページを思いながら書いているうちに、ついついcuntなんて単語をタイプしてしまいました。

この辺も映画ではGray's Anatomyが小道具として使ってあったのかもしれませんが、jesterは気がつきませんでした。
なので、突然のcunt出現はちょっと唐突な感じがしてショックを受けました。

In my dreams I kiss your cunt, your sweet wet cunt.
In my thought I make love to you all day long.

とまあ、こんなことを戯れにうって、その紙はもちろんセシリアに渡すつもりはなく、Gray's Anatomy の1546ページにはさんだ、とロビーは思っておりました。


このcuntやら、2行目の「一日中君とメイク・ラブすることを夢想している」というのを読んで、ブライオニーは生真面目に
「セックスマニア(変質者)だわ!!警察に届けなくちゃ!!」と真剣に思い込むのです。
そのうえ図書室で見てしまったもの・・・
姉を襲うロビーを変質者と思い込んでも仕方ないとjesterには思われます。
それなのに、大人にいっても信じてもらえそうもない、告発したくてもできない苛立ち。

だからのちの事件で自信満々に「わたしのこの目で見ました」といったとき、それが真実と異なるとしても、「変質者を告発しているのだ」という思い、正義を成しているのだという自負がブライオニーの中にあったのではないかと思うんですよね。
もちろん、嫉妬や怒りが綯交ぜになり、自分の中にもあるけれど否定している性への興味やらが根底にあり、混乱してはいたのでしょうけれど。


また、その手紙を読んだ瞬間に、セシリアの心に浮かんだこと。
ちょっと長いけど引用します。

Initially, a simple phrase chased round and round in Cecilia's thought: Of course, of course. How had she not seen it? Everything was explained. The whole day, the weeks before, her childhood. A lifetime. It was clear to her now. Why else take so long to choose a dress, or fight over a vase, or find everything so different, or be unable to leave? What had made her so blind, so obtuse? (p142)

いい加減ですが拙訳してみますと、
「最初に、簡単なフレーズがセシリアの頭の中をぐるぐると廻った。もちろん、もちろんだわ。
なんでいままで気がつかなかったのだろう? 
これで全部判った。
一日中、いいえ、数週間前から、いや子供のころから。
生まれてからずっとだった。今すべてがクリアになった。
なんでドレスを選ぶのにあんなに時間がかかったか、なんで花瓶の事でけんかになったのか、なんですべてが変わってしまったように感じていたのか、なんでこの屋敷を離れがたいと思っていたのか。 
何が彼女を鈍感で盲目にしていたのかが。」

この辺、映画では「ブライオニー、あんたこの手紙を読んだの??」と焦るセシリアがすぐに映ったのでセシリアの気持ちがこんなだったとはっきりとは分からず、jesterは、こんな手紙を読んでセシリアはロビーに対してもっと怒ったんじゃないかしらと思ったけれど、原作を読んで、ああ、あの手紙でセシリアは自分の、そしてロビーの恋心に初めて気がついたのだな〜と思いました。


・・・とまあ、前半部分についてだけでもざっとこんな感じで、原作を読むと、映画では映像だけでしか表現されていなかったものの背景やら、映像にもなっていなかった細かいいろいろな部分がわかるので、jesterのように鈍感なものには、なおさら味わい深くなったわけです。

後半は苦労するロビーの姿ももちろんですが、姉妹二人の深く傷ついた思いが、当時は非常に社会的に低い職業だった看護婦に身を落としてまで、家を出て働き自立する道を選ばせたことをおもうと、セシリアの少しすれた様子、それとは逆に罪悪感を背負い込んだブライオニーのかたくなで暗い表情が切なくてたまりませんでした。



Atonement: A Novel

ま、全部についてこれをやっていると、読書レビューになってしまうし、連載が果てしなく続いてしまうので(爆)、あとの部分にご興味がおありなかたは、原作をお読みになってくださいませね〜(と逃げる)あせあせ(飛び散る汗)

英語は平易で難しい単語はほとんどないけれど、すこぶる美文でリズムがあり、いい英語を読んだという満足感があります。
映画を見たあとならさらに読みやすいと思われます。

(しかし、657円?? アマゾン、安い!
jesterは紀伊国屋で買ったけど997円だったのに〜〜たらーっ(汗)
300円以上も違うってどういうことだ?パンチ

贖罪 上巻 (1)
贖罪 上巻 (1)

邦訳は新潮文庫から出ています。上下巻に分かれているみたいです。



posted by jester at 10:55| Comment(36) | TrackBack(6) | た行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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