そしてなによりも映画作りに対する製作者の深い愛情!
『下妻物語』でビックリ、そして『嫌われ松子の一生』で確信させられた中島哲也監督の才能を再確認してまいりました。
jesterのお好み度は ☆☆☆++でございました。

後藤ひろひとさんの書いたとっても有名な舞台、「MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人」を映画化したものなので、舞台劇の香りがぷんぷん。
ストーリーの骨格は一本で、とてもシンプル。悪く言えば単純なお話。
『変わり者ばかりが集まる病院で、自己により1日しか記憶が持たない少女のために、心を病んだ大人たちが思い出を残そうと奮闘する』というお話です。
それに細部を粘着気質に作りこんで、シュールな笑いをたっぷり含ませて膨らませ、しかも入り口を狭くしてある。
この入り口でこけちゃった人は、多分中に入れないでしょうねえ・・・
CGを多用してる辺は、『アーサーとミニモイの不思議な国』『ジャイアント・ピーチ』なんかや『スパイダーウィックの謎』とかを連想させます。
(しかしフィレディ・ハイモア君は出てませんが)
しかし、中島監督、テリー・ギリアムやリュック・ベッソン、ティム・バートンなんかに負けてないですわ・・・
まさに日本が生んだ天才です。

劇場用の戯曲シナリオを映画で見るとしらけることが多いのは、劇場では俳優さんからじかに伝わってくる『気』が、スクリーンからは伝わってこないから。
でも今回はキャストの演技力でその辺を補っていると思いました。
しかも外観をかなり作りこんである。
またまた事前情報0で出かけたので、役所広司、妻夫木聡、土屋アンナ、國村隼、小池栄子、上川隆也、中山圭哉、加瀬亮、劇団ひとり・・・のなかで、初めから「この人だ」とわかったのは、役所さんと劇団ひとりさんだけでした。
特に國村隼、小池栄子、上川隆也、加瀬亮、妻夫木聡、の変身振りには「えええええ!」と身を乗り出してしまいました。

夢に出てきそう・・・・
胸元の開いた服で片肌ぬげかけて、たくましい肩の筋肉がぼろっとでてましたが、見るたびに笑えました。
「男が珈琲、女がミルクなら、オカマはカフェオレ!」の一言がまたおかしくて・・・・
それと上川隆也も眼鏡を一瞬はずしたシーンで、
「あれ、これってもしかして・・・?」とやっとわかりましたが、ピーターパンのグリーンのタイツ、シンデレラのドレス・・・・
すごいものを見せていただきました。
それから演技力でびっくりが妻夫木聡でしたね。
最後まで誰だかわからなかったし。(爆)(大体若手の俳優をあまり良く知らないので)
その点土屋アンナは、『下妻』とキャラが被っていたので、ほとんど「これが素顔か」

というぐらいの感覚ですぐわかりましたが、彼女の怒号、すっきりしてて結構好きです。
これからもこのスケ番(死語!)キャラで売って欲しいです。
阿部サダヲなんか、サイバー上にとっか現れるウィルス系の狂言回しって感じで、人間とは思えませんでした・・・・
アヤカ・ウィルソンは、なんというか、このままでサンリオのキャラクター商品の「天使」で使えるだろうな、という感じの美少女です。
どこから見てもどこをとってもすべて可愛いんだけど、それが難と言えば難かな。
あまりに完璧に可愛すぎて、造形がCGみたいに人工的な気配すらあり、「子どもらしさ」がないの。
あれがCGだったら「可愛いけどリアルじゃないよね」といわれそうです。(爆)
それがリアルに存在する生物なんだから末恐ろしいです

でもjester的にはもうちょっとこどもっぽいあどけない子役を使ってくれたら、もっとパコに感情移入できそうでした。
例えば『リトル・ミス・サンシャイン』のときのアビゲイル・ブレスリンちゃんみたいな。
鬼のような頑固ジジイの心を溶かす、春の陽のようなあどけなさ。
それがアヤカ・ウィルソンだと、意地悪・偏屈・居丈高じじいの大貫がなんでパコにあそこまで入れ込むの、という点で「美少女だから」サインが



それなのに、劇場には題に釣られてか結構子どもが多くて、「大丈夫なのか」とはらはらしました。
でも出口に向かう通路で、母親ときていた5歳ぐらいの男の子が
「これってお母さん用の映画かと思ったら、感動した。ハンサムな映画だね」と大人なコメントを小さい声でいっていました。
後ろを歩いていたjesterは思わずぎゅっとハグしてぐりぐりぐり!と頭をなでてあげたくなりました・・・・
やはり映画やら芸術やらから個々が何を感じ、何を受け取るかって、その人間一人一人のそれまでの人生経験値と深く関連しているから、挫折を知らない子どもがこの映画から受け取るものは、もっと単純できらきらした部分なんだろうなあ〜
それはそれでとってもよろしい、少しはうらやましいぞ、と思ったjesterでございました。