2008年11月05日

ベティの小さな秘密 JE M'APPELLE ELISABETH/CALL ME ELISABETH

10月に見た中で一番良かった映画というと『JE M'APPELLE ELISABETH/CALL ME ELISABETH (ベティの小さな秘密)』でした。
暇を見つけては見に行っておりました。

(最終日にも見に行きましたが、もう渋谷のシネセゾンでは終わってしまい、今、神戸や京都でやっているのですね。)


こういう少女が主人公の映画というと、古いですけど、なんといってもスペイン映画の「ミツバチのささやき」なんかを思い出します♪
この映画はその道を正統派で継いでいる感じ。

それにjesterは「ロッタちゃんと赤い自転車」「ロッタちゃんの初めてのお使い」「やかまし村の子どもたち」「やかまし村の春夏秋冬」なんかも大好きです。(これはみんなスエーデン映画で子供向けのものですが)

少女と精神を病む青年の逃避行というお話の展開からは、ラストが大昔の「シベールの日曜日」なんかのようになるのでは、とどきどきもしました。(が『シベール・・』とは違う展開でしたが)

ストーリーも画面作りも音楽も音響もセリフも脚本もキャスティングは主役から脇役に至るまで、文句のつけようのない佳作でした。

ベティのかざりっけのない素敵な洋服、大きなお屋敷の少し不気味な感じ、森の美しさ・・・
すべてがわざとらしくなく、ごく自然で、しかもとても美しい。

その中でも大人で、ひたむきで、めちゃくちゃ可愛かったのが、ベティを演じたアルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ
大人の思惑に汚されていない、人間というより天使に近い、神々しくさえ感じられる美しさ。

そして繊細で「生きるのに不器用」な青年イヴォンを演じたバンジャマン・ラモンがまた良かったです。
ポール・ベタニをナイーブにしたような外観と、ピュアな目つきにやられました・・・

その他の脇役も素晴らしい。

『アメリ』での未亡人役が印象的だったヨランド・モローは、戦争で子どもを奪われて、心を病んでいる口の利けないお手伝いさんで、ベティにそっと寄り添う役。

父親役のステファーヌ・フレスも、渋くて知的な顔だちで、落ち着いた演技が大変よろしかったです。


jesterのお好み度は ☆☆☆☆☆++ でございました。

そうそう、ちょうど最近フランスのアンティークのカフェオレ・ボールが気になっていて、一つ欲しいな〜とおもっていたのですが、この映画でもベティがお食事のシーンで大振りのカフェオレ・ボールを使っているんです。

で、映画館のショップで『ベティが使っていたカフェオレ・ボール』復刻版を売っていたのでやられた〜と思いました。

もう少しサイズが大きかったらjesterも買っちゃっていたかも。あせあせ(飛び散る汗)


****以下、ネタバレないですけど、映画の内容には触れてます。未見の方、ご注意ください!****



ベティは大人の都合も嘘も全部わかっている。
そして愛されるために「いいこ」でいる。

お化け屋敷を探検していて、妹を置いて逃げちゃうような勝手な姉だけれど、家族の中では一番信頼している姉が寄宿学校にいくことになり、ベティは一人ぼっち。

両親はベティを愛していて、いい人たちだけれど、毎晩けんかをしていて、ついにお母さんは家に帰らなくなってしまう。
お父さんは院長をしている精神病院の仕事が忙しそう。

ベティは毎日学校帰りに捕獲されたのら犬の『ナッツ』(でかいチョコレート色と白のぶちの成犬)に会いにいき、金網越しに
『必ず助けてあげるから』と約束するけれど、まずはお父さんを説得しなくては。

でもナッツは週末には処分されてしまうのに、お父さんは
『いつか買ってあげような。でもお前にはもっと扱いやすい子犬が合う』と、ベティの真剣な話に少しも乗ってくれない。

ある日お父さんが院長をしている隣にある精神病院から患者が逃げ出す。
それは青年イヴォン(バンジャマン・ラモン)。
だれにも告げずにイヴォンを庭の自転車小屋にかくまい、せっせとゴハンを運ぶベティ・・・。

・・・というようなお話です。


トレーラーを見たときは、ベティとイヴォンが二人で旅をするのが主題の話なのかと思っていました。
でもそれより、ベティの生活に焦点が当たっていました。
少女の日々が淡々と綴られます。

そのベティの生活がとても共感できるのです♪

頼みの綱の姉は家庭を離れて寄宿舎に行き、両親は「子供がいなかったらとっくに別れていたわ!」と喧嘩ばかり。

そんな中でベティは普段の生活もちゃんとこなし、あたらしくクラスに来た顔にあざのある友達には声をかけて話し相手になってやる。
逃げ込んできた青年を匿い、食事の世話をしたり、かいがいしく世話をやく世話好きなベティ。
母は家出、父は仕事、お手伝いさんは突然帰ってしまい、夜遅くまで暗い屋敷で一人で留守番していても、涙もこぼさず気丈なベティ。

でもそんなベティも切れることがある。

両親がとても大きなサッカーゲームを買ってくれる。
「わ〜〜い!」と喜んでみせるベティ。
本当に欲しいのは犬のナッツだけれど・・・・
自分を喜ばせようとゲームを買ってくれる親の気持ちが嬉しかったのかもしれない。

でも、そのサッカーゲーム用のテーブルを入れるために、イヴォンが隠れている物置を掃除することになってしまう。

それにショックを受けていると「わがまま言うんじゃない!」と父は怒る。

「お父さんは、何もわかっていない!!」


あ〜 この辺の気持ちがなんと上手く表現されていることでしょう。
親は子を思っていないわけじゃないけれど、子どもの本当の心の中の切望をわかっていないのです。

それをなんと上手にアルバ・ガイア・クラゲード・ベルージが演じていることか。

比べても仕方ないのですが、同時期にみた『パコと魔法の絵本』のパコを演じたアヤカ・ウィルソンとアルバ・ガイア・クラゲード・ベルージをどうしても比べてしまいました。

アヤカ・ウィルソンは、日本で使える日本語の話せる子役の中ではピカイチに可愛い女の子ですが、皆にかわいいね〜とちやほやされて、写真を撮る時にはこちらのほうから、こんなポーズでこんな笑顔が効果的、と教え込まれている感じがしました。
自分がかわいいと自覚しているあざとさがどこかにあるような。
『パコ』のレビューで「サンリオのキャラクターみたい」と書いたのは、こういう人口的な『媚』をすでに彼女が持っていると感じたからでした。

その点、アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージは、きちんとしつけられた普通のどこにでもいる女の子という感じ。
演技は抜群に上手なのに、どこから撮られたら美しいかとか、こんな話し方が可愛く見えるだろうとかいう計算が全くない。
まったく素で存在している感じです。
その辺が「大人の思惑に汚されてない」「無垢」と感じられた大きな要因だと思います。

そんな彼女が、『地球は死に掛けている』ことに、長いまつげの影を瞳に落としておびえる。

父親に「病院に入っている人たちはどうして心の病気になったの?」と聞き、「生きることに不器用なんだよ」と父に言われて、
「私もいつか、心を病んでしまうかもしれない。だって私も『生きることが不器用』だもの」
なんてつぶらな瞳でつぶやくと、その小さな胸の痛みが伝わってきて、なんだかうるうると泣けてしまうのです。

だからラストの冷静な行動と「エリザベスと呼んで」と胸を張っていうベティには本当に癒されました。

あの年でも、もうしっかり大人なんです、女の子は。


猫監督の画面作りの細かいこだわりにも感服しました。
とにかく色使いがシックで綺麗。

美しい森が背景だけれど、全体的には暗い画面が多く、ぎぎ〜となりながら開く古い洋館のドアや、壊れた人形の目から出てくる蜘蛛、木の梢にぶら下がっている人形など、少女の繊細な感受性を震わせるような、これから展開する生と死を暗示するような小物たちが効いています。

ベティがイヴォンに渡す赤と緑の玉のついている髪留め。
それをずっと手に握って持っているイヴォン。
それに気づいて、そっと手のひらから取り上げ、手首につけてあげるベティ。

こんな感じの小さなエピソードの積み重ねが丁寧で、物語に厚みをくわえていたと感じました。


posted by jester at 20:19| Comment(4) | TrackBack(1) | は行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
jesterさん、ぼんじゅーる。
私も、ロッタちゃんとかやかまし村とか、だーい好きなんですよー。
自然の中の少女映画ってすごくすてきですよねー。
森が好き。
ベティの心情がとても繊細に描かれていて、共感しまくりでしたよね。
そうそう、パコの子は確かに「媚」がありますね。
ハリウッドの名子役なんかもわざとらしいキメ表情をし過ぎるので好きじゃないんですが、このベティちゃんは無垢な感じがすごくよかったですー。
ナッツっていう名前もツボ♪
Posted by かえる at 2008年11月07日 00:47
かえるさん、ぼんしゅー♪ ご訪問&コメントありがとうございます!うれしいです♪

>私も、ロッタちゃんとかやかまし村とか、だーい好きなんですよー。

きゃ〜かえるさんも?
わたしも疲れるとほっとしたくてロッタちゃんを見たりやかまし村を見たり。
うちの猫もロッタといいます。性格も似ています(涙

>自然の中の少女映画ってすごくすてきですよねー。
森が好き。

そうですね! しかもヨーロッパの子どもって自然な演技がとっても上手いの。
というか、自然に撮るのが、監督が上手いのかな。

>ベティの心情がとても繊細に描かれていて、共感しまくりでしたよね。

なんか「泣け〜〜」っていうつくりじゃないのにボロボロと泣けちゃいました。
駆け寄って、頭をなでてあげたい感じ。

>ナッツっていう名前もツボ♪

あの犬がまたおっさん顔でよかったです。
可愛い愛玩犬みたいのもいるのに、他に貰い手がつかないようなナッツを選ぶベティはいい趣味してます!

Posted by jester at 2008年11月07日 21:08
jesterさ〜ん、ご無沙汰しております!
日本国内にいらっしゃるのでしょうか〜?

がんばれ女の子!的な視点の作品は好きです。
この作品、レビューを読ませていただいた当時、とても気になってましたが、こちらでは上映がなく、今月DVDが出たのでようやく観ました〜。
DVDのジャケットは桜色ベースでほんわかと甘いイメージなのですが、ベティの日常は自分勝手な周囲の人たちの言動に傷つき不安だらけ、ビターテイストでしたね。
感受性が強いだけに。ベティに限らず、「いいこ」でいるのはかわいそうだわー。
ベティちゃん役はモチロン、脇の俳優さんたちも良かったですね!
イヴォンはワタシ的には、ベタニというより、ブノワでしたわ。特におどおど情けない表情のとき。
美しい田園風景、おしゃれな小物が目の保養でした。
Posted by DD at 2009年04月19日 19:34
DDさん!!!! 大変申し訳ありませぬ!

>日本国内にいらっしゃるのでしょうか〜?

わはははは。なんか大気圏外にでてまして。(殴

>がんばれ女の子!的な視点の作品は好きです。

私もなんです〜〜

>ベティの日常は自分勝手な周囲の人たちの言動に傷つき不安だらけ、ビターテイストでしたね。
感受性が強いだけに。ベティに限らず、「いいこ」でいるのはかわいそうだわー。

女の子は「いいこ」が要求されるし、頑張ってる子をみるとかわいそうですよね。

>ベティちゃん役はモチロン、脇の俳優さんたちも良かったですね!
イヴォンはワタシ的には、ベタニというより、ブノワでしたわ。特におどおど情けない表情のとき。

ああ、ブノワも良いですね!!

>美しい田園風景、おしゃれな小物が目の保養でした。

まったくいまさらなんですが、わたしもまたDVDを見たくなりました。

Posted by jester at 2010年01月15日 17:56
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『ベティの小さな秘密』 Je m'appelle Elisabeth
Excerpt: 小さな小さな冒険を思い出す。 10歳少女のベティは、父が院長を務める精神病院の隣の敷地で、父母と仲良しの姉と4人で暮らしていた。真っ赤なコートがよく似合う可愛いベティちゃんの物語。イメージ通りの..
Weblog: かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
Tracked: 2008-11-06 22:01
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