2007年03月28日

善き人のためのソナタ

NZで見た映画のレビューは一休みして、最近見た映画のレビューもかかなくちゃ、というわけで、「善き人のためのソナタ」 であります。
20061221002fl00002viewrsz150x.jpgネタばれ嫌いなjesterなんで、鑑賞前はレビューは全く読まず、「ちょっと暗そうな映画?音楽が出てくるの?」ぐらいの予備知識(なのか?)だけで見に行きました。

ドイツの映画はわりと好きなんですが、ナチ時代をテーマにしたものその後の東西分断時代のものも、テーマがテーマだけに後味が重いものが多い気がします。

でもこれは全然ちがいました。

残虐さはなく、それどころかコミカルなシーンが時々あります。背景は暗くても、その中でひときわ光るものにスポットを当てていて、後味いいです。
心地よい人間愛に酔いしれました。

アカデミー賞外国語映画賞をとるものって、時にアカデミー賞作品賞を取るものより感動したりします。(今回は特に!)


ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツが舞台です。秘密警察シュタージで働くヴィースラー大尉は、命令により脚本家のドライマンの盗聴を命じられる。

体制に疑問を感じることなく、くそ真面目だったヴィースラーが、最初はドライマンの恋人のクリスタに惹かれ、そして芸術や音楽、詩などに触れるうちにドライマンの自由な心を尊重したくなる・・・・

エレベーターに乗り合わせたボールを持った少年との小さい会話の中でも、次第に目覚めていくヴィースラーの心理が描かれます。
最初は体制を批判していると思われる親の名前を聞き出そうとしていたのに、ふと気が変わり、「そのボールの名前は?」って聞く変なおじさんになる。
この辺、上手ですね〜

体制に疑問を感じるものと、体制を守ろうとしながら悩むもの、相対する立場の二人の人間が、非常に厳しい環境の中ながら人間の尊厳を守ろうと、密やかに、しかし意思を持って動き始める。

静かな感動を味わいました。

人として生きていくのに何が大切なのか、寡黙なヴィースラーの瞳が語っていました。

人間から悪を引き出すのは何なのか。
そしてその人間を善に導くのは何なのか。


分かりきっていることなのに、時々思い出させてもらわないと、うっかり忘れて流されてしまうjesterであります。

人間性を抑圧するゆがんだ社会体制と、そんな中で殺伐としてしまう心に人間の尊厳を教える芸術というものの素晴らしさ。

私の隣にいらした白髪の男性も、しきりに目をぬぐってらっしゃいました。

赤いリボンのタイプライターを触ると、指に赤い粉がつき、それが紙についてしまう。
痛々しくも見える赤い指のあとが、触れ合うことのないはずの二人の心を通い合わせる・・・・たらーっ(汗)



ぴかぴか(新しい)ヴィースラーを演じたウルリッヒ・ニューエ↑は、台詞が少なく寡黙な役柄ながら、そのビー玉みたいな目にいっぱい感情をたたえて不器用な男を演じきりました。
クリスタに、立場を超えて酒場で声をかけてしまうとき、そして彼女を尋問するときの、精一杯切ない愛を秘めた瞳。ハートたち(複数ハート)
う〜〜役者です!

2007年度、輝くおっさん大賞はこの人だ!!


ぴかぴか(新しい)そしてもう一人の2007年度、輝くおっさん大賞はセバスチャン・コッホ揺れるハート

同じドイツ映画で、jesterが大好きな「トンネル」(ドイツではテレビシリーズだったのを、日本では短縮され映画にして公開されました)では、主人公を演じるハイノー・フェルヒと一緒に西ドイツ側からトンネルを掘る仲間で、残してきた恋人カロラへの気持ちに苦悩する男、マチス・ヒラーを好演していましたが、今回は東独の体制下にあって、才能ある自由人を伸びやかに演じてます。

時々見せる少年のような表情、大人の色香、豊かな教養と、友人の名誉を惜しんで命をかけて体制を告発する勇気・・・ 
うひ〜〜 ドライマンにもやられました・・・パンチ


ぴかぴか(新しい)そういえば途中で冗談を言ったために左遷された若者、ヴィースラーの後ろで封筒開けながらラジオ聞いてましたね(笑

逆境の芸術家と、華々しい才能がない一般人のふれあい、という点では、これまたjesterが大好きなイタリア映画「イル・ポスティーノ」に通じるところがありました。
くしくも郵便配達、というところまで似ているわ〜



見終わったあと、誰かを(誰?)愛したい、芸術に触れたい、人生捨てたモンじゃないという気持ちにさせてくれる、完成度の高い秀作でございました。
公開が続いているうちに、何度か劇場で見たいです!
(しかしシネマライズはレディスディがないのよね〜)



猫ところで、明日から花見に京都に行こうかなと思ってます。
またちょっと中断しますが、来週には帰ってきます。(今度は絶対!(殴)パンチ





posted by jester at 10:17| Comment(18) | TrackBack(14) | や行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
じわじわ〜と効いてきて、ラストは涙〜でした。
観た後で、善く生きるということをしみじみ考えさせられたというか、自分に問われているような気がしました。困難な体制下でなく、現在の日本でも善く生きることは難しい・・・

感動だけでなく、リベリオンの世界だったのもツボ〜(笑)!
観ている間、豆さまやクリスチャン・ベイルの顔が浮かんできました♪
・・・すると、ヴィースラーが栗??!(汗)

>2007年度、輝くおっさん大賞はこの人だ!!

ふはは!もう決定ですか♪
ワタシは観ている間、スティーヴン・セガールっぽいな〜と思ってました。。。
「トンネル」も良い作品でしたね〜。
この方、「ブラック・ブック」にもご出演みたいだし、確かに大賞候補かも?(笑)
ヒロインは「マーサのしあわせレシピ」のときとはまた別人のようでした!

>アカデミー賞外国語映画賞

特に今回のノミネート作品は観たいのが多かったです!
受賞はできなかったけど・・・かも〜ん♪マッツー♪♪是非是非、日本で上映してほしい!(←結局、これが言いたかったのよ・爆)
Posted by DD at 2007年03月28日 19:40
こんばんは! おっ京都へお花見ですか?いいですね〜〜!!
今日はセバスチャン・コッホの「ブラック・ブック」観て来ましたよ!輝くおっさんの胸毛もみてきました♪(下品ですいません)ナチの将校ながら人間味溢れる役でこの人にぴったりでしたよ〜〜jesterさんもご覧になってね^^ それからそれからジム・カヴィーゼルの暗い目が余計じめっと暗い「デジャヴ」も観なくっちゃだめですよー!(笑)
「善きソナ」へのコメントになってませんね(爆)
行ってらっしゃ〜い♪
Posted by マダムS at 2007年03月28日 20:57
DDさん、こんばんわ〜

そういえばSFにすればリベリオンか!
(お〜また見たくなってきたわ♪)

スティーヴン・セガールに、似てます・似てます!眉と目が近いというか・・・
馬面だし・・・・(殴
「トンネル」のときは眼鏡かけていたからそう思わなかったけど・・・

いや〜〜おっさん大賞(=当社比、いい男大賞)候補はいっぱいいるんですけどね〜(爆)
悔しいけどドイツ映画とかフランス映画だと、なかなか日本では追っかけるのが難しいデスだ。
「ブラック・ブック」も見なくちゃ!

あ、そうだ、↓のディパーテッドのコメントのお返事こないだ書きましたです。遅くなっちゃってごめんなさい! なんかここのプロバイダーってコメントがすぐに反映されない時があって、見逃しちゃうときがあるのです。(と人のせいにスル)
Posted by jester at 2007年03月28日 22:17
マダム、こんばんは♪

>今日はセバスチャン・コッホの「ブラック・ブック」観て来ましたよ!輝くおっさんの胸毛もみてきました♪

うひゃ〜、もうご覧になったのですね♪
さすがマダム。
デジャブも今日行こうと思っていて、結局いけなかったわ・・・・
京都から帰ったら見に行きますです。
またいろいろおしえてください、おっしょはん!!
Posted by jester at 2007年03月28日 22:20
こんばんは。
まだ3月なのに今年の輝くおっさん大賞が決定しましたね!w
セバスチャン・コッホはステキでしたよねー。
トンネルに出ていたなんて記憶なしですが・・・。
で、トンネルって、もとはTVものだったんですねぇ。
圧政下ものは硬派なのが多いドイツでやけにエンタメ寄りだなと思っていたので納得。
Posted by かえる at 2007年03月29日 00:06
みんな見てるのに、ワタシだけみてない…。
みんないいと言うのに…。うああ〜!
ワタシは多分DVDで見ることになると思います。
バカな映画もよいけど良質の映画もたまには見たいもんね〜。
ところで京都ですか?いい時期ですよね。
またしばらく世捨て人にならないでね♪いないと寂しいから。
Posted by dim at 2007年03月29日 00:13
かえるさん、「トンネル」のコッホは感じがずいぶん違うんですよね。
眼鏡かけてるし、どちらかというと会計士とかそんな感じの几帳面な感じに見えます。最後に恋人が来なくて、赤ちゃんを受け取る人です。

いったい何人「おっさん大賞」候補がでるか、たのしみですわ〜♪
Posted by jester at 2007年03月29日 07:03
dimさん、
>またしばらく世捨て人にならないでね♪

いないと寂しいから
ううう、嬉しいその一言。
その一言のために戻ってくるよ〜

しかし京都でまずいこうと思っているのが

花の下にて春死なん その如月の望月の頃

の「西行庵」ですがな。わははは。「旅は人生、人生は旅」の世捨て人おっしょはんですから・・・・

行きくれて木の下陰を宿とせば、花や今宵のあるじならまし

というわけで、スナフキンみたいにさすらってきます〜(野宿するなよ〜)(爆)

「善き人」は疲れている心にききまっせ〜

Posted by jester at 2007年03月29日 07:20
花見ですか〜。いいなあ。
しばらくぶりです♪
「輝くおっさん大賞」…なんていい企画ー!私もマネっこしてもいいですか?笑
そうそう、ドライマンも素敵でした。でも彼を私は「おっさん」とはなんか呼べないですー。ヴィスラーの方がおっさんかも。大笑
Posted by シャーロット at 2007年03月31日 19:59
jesterさん、こんにちわ

この映画、題名に惹かれたのですが、内容が暗い感じだったので、パスしたものです。

今は京都ですか。桜、真っ盛りでしょうね。

そう言えば、昨日(4/1)に映画館でみた「ホリデイ」に、チョイ役でルーファス・シーウェルが出ていました。
Posted by matsumo at 2007年04月02日 20:39
シャーロットさん、花見から戻ってきました。

>「輝くおっさん大賞」…なんていい企画ー!私もマネっこしてもいいですか?笑

どうぞどうぞ、やってください。
jesterはどちらかというとおっさん好みなもので・・・・
ドライマンをおっさんと読んだら不遜ですかね?
Posted by jester at 2007年04月03日 10:08
matsumoさん、こんにちは。
そうそう、わたしも「暗そうかも、精神的に元気なときに」とおもい、ちょっと出足が鈍っていたのですが、暗くはなくて、どちらかというと元気をもらえるような映画でした。
もっと音楽が主役かなと思っていましたが、それより人間の心のふれあいがテーマであります。

ホリディ、ごらんになったのですね。
テレビでもとても宣伝してましたね〜
映画館で見る価値あるかなと思ってましたが、ルーファスがでるなら見に行かなくては・・・
Posted by jester at 2007年04月03日 10:11
TBありがとう。

>私の隣にいらした白髪の男性も、しきりに目をぬぐってらっしゃいました。

その白髪男性、僕のことじゃ、ないでしょうねぇ(笑)
Posted by kimion20002000 at 2007年09月27日 20:23
kimion20002000さん、いらっしゃいませ。

>その白髪男性、僕のことじゃ、ないでしょうねぇ(笑)

kimion20002000さんも白髪・・・ですか?
じゃ、もしかしてそうかもしれないですね〜
その節はお世話になりました!
(いやべつにお世話にはなってないですが・・・)
Posted by jester at 2007年09月27日 23:02
やっと見ました。
よかったです。 号泣してしまって、見終わったら顔洗わなきゃなんなかったです(笑)
映画館で見なくて逆によかったかも、です。
>2007年度、輝くおっさん大賞はこの人だ!!
私にとっては2008年度、輝くおっさん大賞をあげていい!と思っちゃいました。

じゃあね
Posted by こり at 2008年09月20日 11:03
こりさん、いらっしゃいませ〜 ご訪問&コメントありがとうございます!うれしいです♪

毎度、こんな下のほうの記事を探してくださってコメントくださって、ありがとうございます♪

私もね、しっとり泣きました・・・

>私にとっては2008年度、輝くおっさん大賞をあげていい!と思っちゃいました

こりさんに一票!
Posted by jester at 2008年09月21日 08:39
jesterさんこんにちは
>毎度、こんな下のほうの記事を探してくださってコメントくださって、ありがとうございます♪
っていうかjesterさんの記事を読んで「あ、この映画は見なきゃ!」って思うことが多く、見終わったらTBさせていただいているのです。
いつもお世話になっているのです。ありがとうございますです。
じゃあね
Posted by こり at 2008年09月22日 00:21
こりさん!!

>っていうかjesterさんの記事を読んで「あ、この映画は見なきゃ!」って思うことが多く、見終わったらTBさせていただいているのです。

うわ〜〜ん、なんてうれしいお言葉!
怠けがちの心にすんごく励みになりました〜
ありがとうございます♪
Posted by jester at 2008年09月27日 10:03
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