2007年04月18日

約束の旅路 (Va, vis et deviens) その2

昨日の続きであります。

yakusoku.jpg
「その1」を読むと、未見の方は「母子のお涙ちょうだいもの」みたいに感じられちゃうかもしれませんけれど、これは前半部分。
この映画、ここからがすごいんですよね。

深く傷つき悩むシュロモの周りの人々の、愛に満ちた、さりげない、また時には激しい言葉が、見ているものの心まで癒してくれます。

シュロモを取り巻く、養い親のヤエル、ヨラム。
そのおじいちゃん。義妹、義弟。
一緒に「モーセ作戦」でイスラエルに来たもう一人の父とも言うべきケス・アスーラ。
それから、シュロモがやけになったときに受け止めてくれた警官まで。

なんて賢く年を取った人たちなんでしょう。
彼らが「守るべきもの」を包み込む大きさに激しく心を動かされました。


世の中には、いやな思い、つらい経験をすると、心の殻を硬くしてガードし、「攻撃は最大の防御」と、人の痛みを分からずに攻撃して、あとは知らん顔するような人間がいます。
自分だけ幸せならいい、と傷ついたものに冷たい人たちも。
そういう人たちに不用意に近づいて痛い思いをすることも多々ありますよね。
シュロモもそんな現実に放り出されます。

でもそんな中でシュロモは、経験を前向きにとらえてしかもオープンハートで誠実に生きている大人たちと出会います。

それも想像を絶する悲惨な体験を乗り越えてきた人たちなのに・・・・

それだからこそ、彼らの言動は研ぎ澄まされて、何が一番大事かを学んだのでしょう。
だからこそ見ているものの心に響くのですよね。

・・・なんかこの人々の言葉を一つ一つ語っちゃいたくなったjesterですけれど、
まだ6月まで岩波ホールで公開が続く映画なので、未見の方も多いと思いますし、ちょっと控えようかなと思っています。
でも煌めく言葉の数々が、まだ耳に響いています。

どんな悲惨な境遇にいても、受け止めて理解してくれる大人がいれば、子供はまっすぐに育っていくものなんですね。
そう信じたいです。


yael.jpgぴかぴか(新しい)そして、養い母のヤエルの視線! イスラエルの大女優という、ヤエル・アベカシスさんが演じてますが、知的であたたかくて、本当に美しい俳優さんです。
血のつながりがなくても、実子と分け隔てなく、子どもと同じ目線に立って育てていくその姿は、子育てのお手本といえるのでは。
これからお母さんになる人にも見て欲しいなあ・・・・


ぴかぴか(新しい)それから幼年時代のシュロモを演じた、モシュ・アサガイ君が本当に上手で、この子の演技があって、この映画が成功したのではと思うほどです。
目力のあるモシュくんの可愛らしさと切ない演技に目が潤みっぱなしでありました。


sirak.jpgぴかぴか(新しい)少年、青年時代の役の役者さんも美しいです。
とくに青年シュロモを演じるシラク・M・サバハは美しい。
細くてスタイルが良くて、ミュージシャンみたい。しかも知的でドレッドヘアがこれほど芸術的に似合っちゃうのってすごい。
そして彼は映画中のシュロモと同じ境遇のエチオピア系ユダヤ人、リアル・ファラシャなんですよね。
数千キロの道を歩き、家族を失いながら「ソロモン作戦」でイスラエルに渡ったそうです。
確かにソロモンとシバの末裔のような高貴な面影です。こうした役者さんたちが、映画にリアリティを与えている気がします。


ぴかぴか(新しい)そのほかに、養い父役のロシュディ・ゼムは抜群のスタイルでカッコよかったし、おじいちゃんのラミ・ダノンもあったかくてよかったです。


ぴかぴか(新しい)それから特筆すべきは音楽ですね〜
アルマンド・アマールが担当していますが、民族音楽の哀切を帯びた女性ボーカルや、それぞれの場面にあった音楽が映画を引き立ててました!


シュロモを囲む4人の母。(本当の母、脱出したとき手を引いてくれた母、養い母、そしてシュロモの子どもの母となる妻。)
女は強いです。

そしてそれを取り巻く男たちも、また熱いです。
重いテーマながら、笑えるようなシーンもところどころに光っていて、人間っていいな〜と思えるような、直球勝負だけど、後味の素晴らしい映画でした。
ああ、救われた・・・って思わせてくれました。


蛇足ですが、邦題「約束の旅路」なんですけれど、最後のシュロモの台詞などから取ったのかな〜と思いますけれど、微妙ですね。
原題の持つ強さが抜けちゃってる感じ。

英米での題は「Live and become 」
その他の国でも大体そんな感じで題がついているみたいです。
原題の「Va, vis et deviens」の「行け」という言葉が抜けているのが残念ですが(この言葉、シュロモの母たちが言う強い台詞で、とても大切だとjesterは思うのですが)・・・
少なくとも、邦題よりはずっといい感じだとおもいます。

しかし岩波ホール、いつもながらいい仕事してるなあ。
3月から6月までこれやってくれるんだもの。
いつ終わるかとはらはらしないで、また見にいける。
字幕はとっても読みづらかったけど、でも感謝。
ありがとう、岩波ホール。
ホールには鑑賞後用にUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の募金箱までありました。(素直なので募金したjesterです)

あとはもうちょっと客席に傾斜が着いて、背もたれが高くなって、音響が良くなって、画面が大きくなってくれて、全席指定になってくれれば言うことないです。はい。





posted by jester at 09:33| Comment(19) | TrackBack(4) | や行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして^^

私の芸能サイトで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://rukanews0003.blog96.fc2.com/blog-entry-186.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
Posted by イケイケ芸能人 at 2007年04月18日 19:40
ご紹介ありがとうございます♪
お話にもスゴク興味がありますが、ふむふむ、美しくて上手い役者さんたちがそんなに出ているのですね〜♪しっかり背中を押されたというか、どつかれたですわ(笑)!
うちのほうに下ってきたら是非観に行きますね。
Posted by DD at 2007年04月18日 21:30
こんばんはー。
素晴らしい映画でしたよねー。
岩波ホールは劇場としてはかなり嫌いですが、味わい深い世界の名作をかけてくれるので貴重です。
「この素晴らしき世界」や「亀も空を飛ぶ」や・・。
青年時代のシュロモの俳優さん、確か、一昨年のフランス映画祭にいらっしゃっていたような気がするんですが、記憶が・・・。
シグフリードの映画が好きだった私は、ロシュディ・ゼムの活躍も嬉しいです。
Posted by かえる at 2007年04月19日 01:12
いけいけ芸能人さん、ご紹介ありがとうございました。
すごいHNですね。
Posted by jester at 2007年04月19日 10:29
DDさん、こんにちは。
そちらでも早く公開になると良いですね♪

というか、6月までやってますよ〜
こっちに来られたら・・・?(殴

娘が初めて海外旅行に一人で出かけ、jesterはさらに『親離れ』を感じた春でした。ふう。

ずるいですよね、子どもって。強引に親の時間を占有して心まで占有して、さらっと離れていくんだから。(まあそうならないと困るのですけれど・・・)

と話がずれましたが、何かできることがあったらおっしゃってくださいまし。
Posted by jester at 2007年04月19日 10:36
かえるさん、いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。
ほんとにいい映画でしたね!

岩波ホール、もっと設備を充実させるには、あのペースで公開していたら経済的に成り立たないのでしょうね。
いい作品をやってくれるから、文句も言えませんですが・・・(いや、言ってますけど(汗))

ロシュディ・ゼム、すらっとしてて軽やかで、素敵な俳優さんですね♪
Posted by jester at 2007年04月19日 10:39
こんにちは〜。遅くなりましたっ。
私もやっと見に行けた感じでしたよ!
どうもあのホールに行くのは構えてしまうなあ。。。
でも何をおいても見に行ってよかったですよ。もう顔が腫れましたし。あ、泣いて。笑
ヤエルさんのお写真、綺麗ですね〜。
心もすごく綺麗な役をこなしてました。
たくさんの母に囲まれてシュロモも幸せですね。いいパパになってくれるかしら・・・
Posted by シャーロット at 2007年04月19日 14:28
シャーロットさん、TB&コメントありがとうございます。
岩波ホールってなんか映画館って感じがしませんよね。舞台が広いし。
私はずっと目が潤みっぱなしではありましたが、顔が腫れるほどではなかったです。(灯台守とか歓びを歌に載せてのほうが涙の量は多かったかも)
でもなんかしみじみと心が潤された感じがしました。

ヤエルさん、この写真もきれいですけれど、じっと見る視線が良かったです。目つきに愛があふれてるっていうか・・・

シュロモ、きっと子どもを可愛がる賢い親になるでしょうね。
Posted by jester at 2007年04月19日 20:06
続きを読みに伺いました〜
感想はjesterさんとほぼ同じですわ〜♪ あ、音楽も良かったですよね!
何度となく目頭が熱くなりました。
そうそう!青年時代のあの子も精悍な顔つきでなかなか素敵。役と同じ体験をしているなんて、演じるの辛くなかったでしょうかしらね・・「ブラッド・ダイヤモンド」のジャイモン・フンスゥが感情移入しすぎて暫く辛くてどうしようもなかったって告白してますね。
岩波さん!お願いですから椅子を新調して欲しい・・・(^^;)
Posted by マダムS at 2007年04月19日 21:53
こんにちわ!TB&コメントありがとうございました。
もう、この作品を見たという方がいるだけでも嬉しく感じられます。
2つの記事に渡って、素晴らしいですねー
私も、この作品を見て色々な想いが後から後から湧いてきました。数日経ってからの方が、より強い想いが。ちょっと大袈裟ですけど、『ツォツィ』と併せて私の心を漂白してくれたような素晴らしい作品でした。
私も「書く事が一杯」なんて思ってましたけど。jesterさんの記事を拝見して、まだまだ気づいていなかった大事なことがたくさんあったなぁ と、改めて感慨深くなりました。思わず、目が潤んできてしまいました。
何よりも素晴らしいレビューだなと思った部分は
>オープンハートで誠実に生きている大人たち
という表現です。見事ですね!そして改めて、今からでもいいからオープンハートな大人を目指して自分も頑張ろうと思いましたよ。

そそ、他の記事にもTBさせて頂きますねん♪今後ともどうぞヨロシクお願い致します。
Posted by 隣の評論家 at 2007年04月20日 20:00
そうですか・・・jesterさん的には2007年ベストに入る作品でしたか。

うーむ、見逃してまずった・・・。
けれどjesterさんの優しく丁寧に書かれたレビューを拝読してその感動をたくさん分けてもらったような気になりました。

予告ではお母さんが行け!と息子を無理やり手放すところだけしか見てないんですが、その後そんな風に展開していくのですね・・・。

機会があれば必ず見たいと思います。
Posted by nouilles-sautees at 2007年04月20日 22:56
マダム、来てくださってありがとうございます♪

音楽もよかったですよね〜
ちょっと「イングリッシュペイシェント」みたいな、なんともいえない女性ボーカルが・・・・
劇場に文庫本とCDを売っていた様な気がしたのですが、買わずに帰って、アマゾンでCDを捜してみたら見つからず・・・
今度行ってCDがあったら買おうかなとおもってます。

>「ブラッド・ダイヤモンド」のジャイモン・フンスゥが感情移入しすぎて暫く辛くてどうしようもなかったって告白してますね。

ああ、あの役もつらいでしょうね〜
(見ててもつらかったもん)
役をやっているときって、なりきってるわけだから、アップダウンもすごいのでしょうね。
Posted by jester at 2007年04月21日 07:54
隣の評論家さん、ご来訪ありがとうございます♪
それとたくさんたくさんトラックバックしてくださって、感謝です。

なんかいろいろ教えてくれることがありましたよね、この映画。
こういう映画を見たときはなかなか感想が書けないです。書いているうちにまた次々と書きたいことが浮かんできて続けてだらだらと書いちゃうこともよくあります。
でもかいとかないと忘れちゃうので・・・・(ま、書いておいても忘れちゃいますけど)

『ツォツィ』も来週ぐらいに見にいけたらいいな〜と思っています。

見たい映画があるって良いですよね!わくわく。
こちらこそ、これからもいろいろ教えてくださいませ♪
Posted by jester at 2007年04月21日 08:06
nouilles-sauteesさん、おかえりなさい〜〜
疲れ、取れましたか?

お宅でこの映画の記事、捜したんですけど見当たらなくて、コメントしてしまったのですけれど、予告で見るよりもうちょっと柔らかな映画でしたよ〜
フランスでは話題になったのでしょうか?

あの「行け!」というシーンがしょっぱななんですけれど、あそこからながーい人生の旅路が始まる・・・という感じです。
Posted by jester at 2007年04月21日 08:46
どもども。

これjesterさんのところでご紹介いただいて、絶対に観にいくつもりでいたのにいいいい〜〜〜先週で終わってしまったのですね・・・(涙)。
金曜日に会社を半日サボって観に行こうかなあと思ったら、時間があわず、結局「主人公はボクだった」なんて観てしまったよ。まあこれはこれで面白かったのですけどね。
D
VDになったら絶対に見るわね〜。
そして覚えていたら再びコメントにきます。
Posted by dim at 2007年06月04日 00:47
ありゃりゃ?
おかしなところで切れてしまったよ・・・(汗)。


VD

じゃなくて
「DVD」です〜〜〜!
すいません・・・。
Posted by dim at 2007年06月04日 00:51
dimさん、

>絶対に観にいくつもりでいたのにいいいい〜

わ〜〜、うれしいなっと。でも、ああ・・・ 終わってしまったの?
うむむむ、残念ですね〜
まあ、都内だと、2番館でまたやることもありますよ。
きっとDVDもでるしね。

ほんと、この映画はjester的におすすめでございました。
Posted by jester at 2007年06月04日 07:12
いつも、こんなに間抜けに遅くなってからのTB&コメントばかりで、申し訳ありませんm(_ _)m

この映画、本当に良かった!!!
ほんと、子供ってあれだけしっかり
愛されてると、なんとかちゃんと育って
いけるもんなんだな、と思いましたし
9歳から青年〜大人になるまでの彼の
いろんな意味での成長が、上手く、丁寧に
描いてありましたよね。

両母親のそれぞれの愛の形を想うと
胸がつまりました。

見てるこちらもたくさんの”愛”がもらえたなぁ、と思えた映画でもありました。

あ〜、見て良かったわ〜〜〜♪
Posted by メル at 2008年02月28日 09:05
メルさん、コメントありがとうございます! 嬉しいですわ♪

>いつも、こんなに間抜けに遅くなってからのTB&コメントばかりで、申し訳ありません

とんでもないです! 過去記事を探していただいて、嬉しいです♪

>両母親のそれぞれの愛の形を想うと
胸がつまりました。

血がつながっていなくても、母は強しなんですよね〜
母子ものってほんとに心に響いちゃいます。恋愛物よりなんか響く今日この頃です。

>見てるこちらもたくさんの”愛”がもらえたなぁ、と思えた映画でもありました。
あ〜、見て良かったわ〜〜〜♪

わ〜〜私もまた見たくなりました!!
Posted by jester at 2008年02月28日 10:18
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