2007年06月01日

鬼が来た! (鬼子来了)

2000年カンヌでグランプリを取った中国映画です。
ずいぶん前の映画ですから、もうご覧になった方のほうが多いと思います。
jesterは最近、この映画に出演している香川照之さんの書いた本を何冊か読んだので、見ることにしました。

onigakita.jpg受賞当時jesterは日本にいなかったので、カンヌの受賞が日本でどのぐらい話題になったのかよく知りません。
香川照之さんはじめ、日本人の俳優が何人か出ている映画ですが、舞台は太平洋戦争の頃の中国です。

ただの「反日映画」とか「反戦映画」ではないのですが、日本の人にどのぐらい受け入れられたでしょう。
気になるところです。


軍艦マーチが流れ、旭日旗がはためく第二次世界大戦末期の中国。
日本軍占領下の寒村に麻袋2つ。
中には捕虜の日本兵、花屋小三郎(香川照之)と、日本軍で通訳をしている中国人の、トン・ハンチェン(ユエン・ティン)がいれられていた。

鉄砲を突きつけられ、この麻袋を押し付けられた馬大三(チアン・ウェン/姜文=監督・主演)は困って村の長老たちと話し合う。その結果、村人達は男たちを生かしておくことにする。

この辺の話し合いからして面白いんですね〜
ブラックジョーク満載のコメディを見ているような、背中をくすぐられるような感じ。

香川照之演じる花屋小三郎は、捕虜になってしまった自分がふがいなくて、やけになって、
「早く殺せ〜〜!! おれは中国人を殺した!犯した!」とか気が狂ったように怒鳴り散らしているのですが、殺されたくない通訳のトンはこれを、
「私は何も悪いことはしてません〜〜ただの料理人です〜」なんて訳すのです。

「あいつらを罵ってやる!罵り言葉の一番悪いのを教えろ!」と花屋はトンに要求。
一生懸命におぼえて、馬大三に浴びせかける言葉は、実は
「お兄さん、お姉さん、明けましておめでとうございます!!」だったりして、花屋が必死に怒鳴れば怒鳴るほど、滑稽さが増すのでした。

とコミカルに(ちょっと調子に乗りすぎの感もあります)つづられながら、物語は展開。
花屋は優しく接してくれる馬大三に心を開いていきますが・・・・



戦地の生と死のハザマで、ただの人間が簡単に鬼になり、そして人間に戻り、また鬼になり・・・
戦争という究極の状態の中で、「人間という生き物」をシニカルな笑いとともにじっくりと描いていきます。


香川照之は本当に熱演で、鬼気迫ってます。
(これはあとで撮影時のことを書いた本、「中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記」を読んでみて、その理由が分かりましたが・・・)
自我を破壊して演技するその迫力に圧倒されます。
狂気すら漂わせる目つきに、才能ある役者さんだな〜と思ってしまいます。


タイトルの「鬼」は、単純に『日本』を意味するだけでなく、それに引っ掛けて、戦争で引き出されてしまう人間の心の「鬼」であり、それは誰の心にもあるといいたいと思います。

この辺、言葉にすると安っぽくなりますが、映画ではとても骨太にこのテーマが語られています。

中国では上映禁止になり、チアン・ウェン(姜文)監督は仕事を干され、中国政府は他国での上映にまで抗議するという有様。
よその国のことながら、相変わらずつまらないことにこだわって表現の自由を抑圧する中国政府に怒りを覚えます。


それにしても、たとえばホロコーストの作品を見ていると「ドイツ人ってひどすぎ!」と嫌気が差すのですが、これを見ていても、いつの間にか馬大三に共感してみてしまうので、「日本人、ひどすぎ!」と思ってしまい、
「あ・・・自分たちだった・・・」とショックです。あせあせ(飛び散る汗)

昔中国にいたとき、南京大虐殺に関する映画を見に行こうとして、「映画館で日本人だってばれたらリンチにあうからやめな!」と止められました。
それでも映画館の入り口まで行ったのに、その時その映画を見なかったのは、その日から違う映画になっちゃってたから(調べてから行け!)なんですが、今はこの映画を中国で見る勇気もないかもしれません・・・(・・・中国語がわかんないって言うのがネックですが)


この作品を見たのはまず、日本映画について彼が書いた本、「日本魅録」を読んで、面白かったので、でした。

そしてDVDでこの映画「鬼が来た!」を見て、そのあと、「中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記」を読みました。

これがと〜〜っても面白かったです!!
この映画を見た方には読むことをおすすめしちゃいます。
この表紙・・・・香川さん、怒鳴ってますよ〜

炎天下で合計3時間半も『気をつけ!』の姿勢で立たされたり、匍匐前進の訓練やらランニングやら、こんなつらい訓練していたのね〜とびっくりするやら呆れるやら。

こんな苦労をしたのか〜
最後はこんなに追い込まれていたのね〜
とため息つきながらも、異文化体験&カルチャーショックに香川さんが打ちのめされ、絶望し、孤戦奮闘する様子が赤裸々に告白されて、笑いながらぐいぐいと読まされてしまいます。(爆)

映画では「チンピラのお兄ちゃんみたい」と思ってみていた酒塚隊長を演じる澤田謙也が、実は異国でとても頼りになるいいやつだった、なんていうのも良くわかって面白いです。

中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記」の感想については、jesterの別ブログ、ゆきてかえりしひびにアップしたので、良かったら読んでみてくださいませ。





posted by jester at 12:34| Comment(6) | TrackBack(2) | あ行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やってきました!
ご紹介ありがとうございますー

小学校の時に友達から里中満智子さんの「海のオーロラ」を借りて読んで、ドイツ人はひどい!って思ったモノですが、実は日本人もひどかったんですよね。
戦争がそうさせるというか。

日本人に辛い思いをさせられた中国の人が「月日も経ったし許すとか許さないとかじゃない。でも絶対に忘れない」って言っていたのを聞いたことがあります。
重い一言ですよね。

香川さんの「目」ってすごいですよね。
それにしても「お兄さん、お姉さん、あけましておめでとうございます!」には大笑いです。
Posted by くっさめ at 2007年06月05日 07:48
くっさめさん、いらっしゃいませ〜
コメントありがとうございます♪

>実は日本人もひどかったんですよね。
戦争がそうさせるというか。

そういう現実をもっと知ったほうが良いですよね、みんな。極限になったら自分だって何をするかわかりませんもん。
今でも中国の年配の方は日本大嫌いです。若い人はそうでもないけれど・・・「絶対忘れないための反日教育」もしっかりしているし。まあ日本はしなさすぎかな?と思うこともありますけれど・・・

>それにしても「お兄さん、お姉さん、あけましておめでとうございます!」には

香川さんの演技が鬼気迫るほどおかしいのでありました〜
Posted by jester at 2007年06月05日 18:08
や〜ん jesterさん これ見ましたよ〜〜。結構前かも。フランスでかなり評価が高かった映画です。
日本軍が中国にひどい仕打ちをしたという映画なのかと思いきや、中国で捕虜になった日本人の話だったので、結構面白かったと思った記憶があります。香川照之がすばらしかったですよね。気迫の一言でした。

最後はね・・・やっぱり戦争なんだよな・・・って日本人として居心地悪くなったのを覚えてます。
もう一度しっかりみたいなあ〜。
Posted by cinephile at 2007年06月06日 07:19
cinephileさん、コメントありがとうございます。

フランスでは大々的に公開になったのかしら?

昨日NHKのクローズアップ現代という番組で「モガリの森」の河瀬監督がでてたのですが、フランスでは49館(?だったかな?)で公開されるのに、日本では10館でしか公開がない、って言ってました。
マダムSに教えてもらったところによると、東京では今のところ1館だけということですし、寂しいです。それに混むし!

話がそれましたが、「日本人として居心地悪くなったのを」って、どういうラストでしたか?
もしかして日本公開版とラストが違うのかもしれません。最後に花屋が年を取って、馬大三の子孫に謝りに行くというシーンがある版もあるらしいのですが・・・
日本のはカラーになってすぐに終わりです。
Posted by jester at 2007年06月06日 19:05
おおおおお〜っ、こちらにもお邪魔しますよん。
私は香川照之が大好きでして。香川照之特集にて鑑賞しました。パンフレットは購入したんですけど、本は買いませんでした。でも、jesterさんの記事を読んで「嗚呼、買えば良かった・・・」と後悔しきりでっす。
Posted by 隣の評論家 at 2007年06月16日 22:29
隣の批評家さん、こちらにもコメント、ありがとうございます♪

わ〜〜となひょうさんも(と呼んでいいでしょうか?)香川ファンでしたか〜〜
いい演技、しますよね!

本、かなり面白いですよ。もう一回映画を見たくなること請け合いです。
図書館などにも入ってますから、チャンスがあったら読んでみて下さい。
あと「日本魅録」もお勧めです。彼の『本質的な賢さ・考え深さ』がじりじり伝わってきますです。
Posted by jester at 2007年06月17日 07:53
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Tracked: 2007-06-16 22:25

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