2007年07月19日

明日へのチケット Tickets

とりあえず問題の画像をでかく貼り付けて見ましょう。
明日へのチケット
明日へのチケット


ポスターにもチラシにも使われた、この画像の、列車の窓から顔をだして叫ぶ青年たちの表情&ユニフォームと「明日へのチケット」という邦題で、「ああん、もう内容がだいたい読めたぜ」、と早とちりしてしまい、ぐずぐずしているうちに映画館での公開が終わってしまって、結局行けませんでした・・・
しまったなあ〜あせあせ(飛び散る汗)


でも、ケン・ローチ、アッバス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミの三監督が作っているのだし、と引っかかっていたので、DVD発売で気を取り直して見てみたら、良かったんですよ♪

各監督の優しいまなざしが感じられる人間描写に、ああ、なんかこういう映画見たかったのだな、と思いました。
映画館で見たかった!


インスブルックからローマまでの鉄道旅行(途中乗り換えてると思うけれど)をするアルバニア難民の家族と、その列車に同乗した人々の話が淡々と語られます。
隣り合わせた人それぞれにドラマを抱えているのです。



オルミー監督の、食堂車に座る老人と取引先の秘書の女性の淡い想いを描いているエピソードが1つ目の話。
老人の子供時代の「ピアノを弾く少女」のほろ苦い思い出が現実にフラッシュバックします。

valeria.jpgヴァレリア・ブルーニ・テデスキがなんとも素敵です。ゆるくカーブした髪、男仕立てのシャツにパールのネックレス。こんな大人になりたい! (何かご質問は?)
「僕を葬る」でも良かったけれど、今回も素敵!
来月公開される「プロバンスの贈り物」にもでてますよね。(ラッセル・クロウが主演のラブストーリーというと少々考えちゃいますが・・・)

彼女の瞳の煌めきは、老人の妄想が大分入っているかなと思うけれど、彼女に宛てたメールを書いては消ししている老人が、最後、ミルクを片手に現実に立ち向かっていくのがいい。
こういう大げさでない、小さな行動ってかえって胸に響きます。
自分の孫をいとおしく思うおじいちゃんだからこそ、ただ座ってみているわけには行かなかったのですよね。
しかも最後まで見せないあっさりした終わり方が粋です!


ぴかぴか(新しい)次のエピソードは、キアロスタミ監督のもの。

わがままな中年女性と、その荷物を大量に抱えた青年。
最初親子?と思うけれど、さにあらず。


女性は今はなき軍隊の偉い人の妻で、この人に仕えるのが青年の兵役拒否のボランティアの仕事のようです。

この女性がすごい人で・・・、ド〜〜ンと太った姿だけでもかなりなのに、二等の切符で一等席に陣取りヒステリックに怒鳴り散らす、理屈の通らないとっても嫌な人。
後半、逃げた青年を執拗に追いかける女性の鬼気迫る姿には、「うぎゃあ、見つかる〜〜」とホラー並みにどきどき。

でもそれだけで終わらないのがさすが。
「この人、携帯も盗んだの?」という観客の思い込みを誘い、それをあっけなく覆して見せる。うまいなあ。

多分若かりし頃はほっそりして美しく、周囲の男性からちやほやされたために、わがまま邦題が通ってしまってここまで過ごしてきたのだろう女性の、夫に先立たれ、現実に直面してとまどう瞳。
男性の目を集める美しき若い女性を見る、彼女の目。
そして列車の行き止まりのコンパートメントでつくため息。
降りた駅でぼおっと荷物に腰掛ける姿は哀れです。

いやな人だな・・・と思いつつ見てたのに、いつの間にかちょっと同情してたりする。

お願い、誰か彼女にまっとうな人間づきあいを教えてあげて〜〜

無駄のない抑制された表現で、盛りを過ぎたのに精神的に成長していない人間の焦りととまどい、そして誰にも必ず訪れる老いの悲哀を浮き彫りにしています。


ぴかぴか(新しい)そして3番目は、ケン・ローチ監督のもの。
サッカーチーム、セルティックのサポーターの青年3人がスコットランドからサッカーの応援のためにローマに向かう途中、アルバニア難民にチケットを盗まれるエピソード。

あんまり「いけてない」若者の彼ら。
デオドラントをパンツの中までシュッシュしたり、(多分職場のスーパーで売れ残りの)サンドイッチを大量に持ってきて食費を節約したり。

命がけの難民も大変だけれど、スーパーに勤めてこつこつお金を貯めて、試合を見に行く彼らだって決して裕福なわけじゃない。
もう一人分の列車のチケット代を出すことも出来ないぐらい。

その中で、「自分たちにできることなんかないよ」と一番難民につらく当たっていたフランクが最後に彼らに見せる情け。
自分の無力を知りつつ、思わず手を伸べてしまう、その心に共鳴しちゃいます。


実はjesterは、「そのスポーツチームが好き同士」というだけで刹那的に周囲が見えぬほど盛り上がれる「サポーターの乗り」は、どちらかというと遠巻きにながめてしまうほうです。
(楽しい気持ちは分かるんだけど・・・・サポーターの方たち、ごめんなさいね・・・)

特にヨーロッパのサッカーのフーリガンと呼ばれる人たちの行動を見ていると、個人的な相互理解はないのに、あそこまで瞬時に熱狂できるのはなんとなく怖い・・・。
ああいう集団は悪い意図を持って扇動しようとすれば簡単に操作できますよね。

でもこの映画の最後の「サポーターのふれあい」は理屈抜きでちょっとすがすがしくてよかったな。

もしかしていろいろな難しい問題を片付けるのは、こんな簡単なコミュニケーションなのかも、と思わせてくれました。


最後に全部のエピソードがまとまるのかと思っていたら、なんとなく終わってしまったので、少し物足りない感じをもたれるかたもいるかもしれませんが、深いものを描いているのに饒舌になりすぎないところが、余韻をじんわりと味わうことが出来るラストで、ぜひ映画館で見て、もらった思いを抱えて帰り道歩きたかったな〜 なんて思いました。

残念!

せめて題名だけでも「明日への」をはずして「チケット」だけにしてもらえなかったかしらねえ・・・・・パンチ






posted by jester at 10:41| Comment(14) | TrackBack(8) | あ行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そうですか!ヨカッタんですね〜
私もこのポスターとタイトルだと
「ま、見なくてもいっか〜」と思ってしまいます。
jesterさんはそんな中からちゃんと「拾い物」の映画を
嗅ぎ分ける力があるんですね♪
DVDもよくチェックしてらっしゃいますよね。
良い映画に巡り会う勝率、かなり高くありませんか?
見なかった映画でもjesterレポを読むだけで、なんだか心がホッコリします。
Posted by igu at 2007年07月19日 11:50
jester さん、こんにちはー。
これはもうホントに素晴らしい作品だったと思いますー。
麦の穂、ではシビアな現実を描ききったケンローチが、
ここでは珍しく、楽しくてすがすがしい物語を紡いでくれたのが嬉しかったです。
地味だけど味わい深い映画でした。
列車の旅がしたくなりましたー。
立場や国境を越える心♪
Posted by かえる at 2007年07月19日 12:37
こんばんはー。
列車ムービーもいいものですね〜
私もこういう旅をしてみたい。…あ、ただ現実逃避したいだけかもっていう噂。笑
実はケンローチの特集上映を渋谷で今やってますが、本作品も組み込まれてる模様。私は違う未見の作品をいくつか見にいきましたが。
私はどっちかというと、このポスターと題名で見に行った感じですー。ようするに単細胞なんで、このベタさが良さ気だーと思っちゃったのでした。笑
ヴァレリア、素敵でしたよね。
プロバンス…にも出てるのですかっ?
おー、では見に行かねば…

ケンローチの担当部分はやはり人気のようですね。最後はとっても妙に楽しくなりました。こういう巨匠が3人も揃って映画が撮れるなんてとってもエキサイティング。
現場も楽しそうです♪
Posted by シャーロット at 2007年07月19日 22:50
この作品、SWEET SIXTEENのリアムたちが出ている(違)というので観たのでした〜。
あの子達が、こんなに社会適応できるまでに精神的に成長してたんだな〜と思うと感涙。(だから違う)

1話目の妄想おじいさんのお話も2話目のわがままおばさんの話も良かったですね。わが身を振り返りました。(爆)それぞれに美女と美男が出ていて目の保養♪にもなりましたし。
同じ映画の中で、1話目と2話目の色彩の濃淡がかなり異なっていた記憶があるのですが(?)、それが印象に残っています。映画の繋ぎがそのまま、国は異なれどヨーロッパとして繋がってるのね〜って思えて。実際は、そんなに単純なものでもないでしょうが。
Posted by DD at 2007年07月19日 23:47
iguさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

なんか強いメッセージ性はないのですが、じんわり効いてくるかんじで、こういう映画すきなのです♪

>DVDもよくチェックしてらっしゃいますよね。
良い映画に巡り会う勝率、かなり高くありませんか?

いやいや、実はここに書いてないだけで、大失敗の映画っていうのも3倍ぐらいあるのであります(汗)
基本的には、見て、「レビューを書きたいな」と思ったもの以外は書かないのでした。
でも最近、あまり好きではないものはその理由を考えてみるのも面白いかもな、と思いだしてきております。
Posted by jester at 2007年07月20日 08:31
かえるさん、いらっしゃいませ!
TB&コメントありがとうございます!

>麦の穂、ではシビアな現実を描ききったケンローチが、
ここでは珍しく、楽しくてすがすがしい物語を紡いでくれたのが嬉しかったです。

麦の穂のあの絶望にみちた展開と裏腹に、なんか希望がある話でよかったですよね。
見終わったあとすがすがしかったです♪

>列車の旅がしたくなりましたー。

私もです〜
国から国へ、列車で旅のできる大陸を旅したいなあ〜 うずうず。
Posted by jester at 2007年07月20日 08:34
シャーロットさん、いらっしゃいませ♪
TB&コメントありがとうございます!
この映画、なんかしみじみと心が温まる感じでありました。

>ヴァレリア、素敵でしたよね。
プロバンス…にも出てるのですかっ?
おー、では見に行かねば…

本当に素敵です!
低い声でぼそぼそしゃべるのもなんか暖かい感じです。
プロバンスではどうもちょい役らしいのですが・・
フランス人の弁護士役らしいです。

>実はケンローチの特集上映を渋谷で今やってますが、本作品も組み込まれてる模様。私は違う未見の作品をいくつか見にいきましたが。

そうなんですってね♪前に麦穂のときに、コメントで教えてもらいました。私もいけないかなと画策はしたのですが、このところ忙しくて・・・(汗)
Posted by jester at 2007年07月20日 08:38
DDさん、いらっしゃい♪
さすがDDさん、ご覧になってらしたのネ〜

>1話目の妄想おじいさんのお話も2話目のわがままおばさんの話も良かったですね。わが身を振り返りました。

ほんとです。ああいうのみると「すげえ」と思うけれど、じっさい家族を怒鳴っているところは、jesterもあれに近いものがあるかも・・・(爆)
だれか教えてやれよ〜ですだ。(汗)

>同じ映画の中で、1話目と2話目の色彩の濃淡がかなり異なっていた記憶があるのですが(?)、それが印象に残っています。

私、1話目が結構好きだったのですよ。(2話目は身につまされたけど)あのアップの二人のかもし出す呼吸がたまらなくて。
1話目は夜の物語で、2話目は朝の物語なんですよね。それが人生の終わりに近づいているものと、これから生きようとしているものとを、結構象徴しているのかもしれない気もします。

>映画の繋ぎがそのまま、国は異なれどヨーロッパとして繋がってるのね〜って思えて。

あ〜そういう感じしますね。
イタリアに入ってくると明るく、やかましい感じになってきて。
国境を越すと、すごく変わるんですよね、ヨーロッパって。
Posted by jester at 2007年07月20日 08:44
こんばんは〜
これ、昨日観る予定だったんですよ。
「ひまわり」とはしごで。
そしたら、すでに開始15分経っていて、入館できても途中入館がいやであきらめました。
今週いっぱいですが、また見逃した〜
と悲しい思いをしています。
Posted by 八ちゃん at 2007年07月26日 22:53
八ちゃんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

あらら、残念でしたね。
う〜ん、15分過ぎてると、オルミー監督の話はほとんど見られないかもですね。
でも他の監督のは全部見られると思いますが。

でもDVDでご覧になるという手もありますから、あまり悲しがらないでくださいませ♪

Posted by jester at 2007年07月27日 10:06
これ、ほんとに良かったです〜♪

おっしゃる通り、この題名何とかしてもらえなかったですかね(^^;;)
ジャケットと題名で、もう内容わかったような気になっちゃいますもんね〜(^^;;)
全然イメージと違ってました。

>もしかしていろいろな難しい問題を片付けるのは、こんな簡単なコミュニケーションなのかも、と思わせてくれました

ほんとそうですよね〜!
列車の中というかぎられた空間でしたが、
やりようによってはこんなに素晴らしい、そして余韻を残すような映画ができるんだな、と感心しました。
それに、まだまだエピソードとか作れそうですよね^^

TBさせていただきましたm(_ _)m
Posted by メル at 2007年08月03日 11:51
メルさん、いらっしゃいませ〜
TB&コメントありがとうございます。

邦題のつけ方のセンスのなさには、いつもがっかりしてしまうことが多いです。
観客を馬鹿にしてると思うこともあるし、題でネタばれしていることもありますよね・・・(汗)

なんか淡々としているのが好きです♪

列車の中では今日もこうしてたくさんのドラマが生まれ、運ばれているのでしょうね・・・・
Posted by jester at 2007年08月03日 20:13
こんにちは。
またまた昔の記事にTBさせていただきました。
jesterさんのおかげでまたいい映画を見ることが出来ました。
感謝です!

じゃあね
Posted by こり at 2009年01月29日 00:21
こりさん、以前の記事を探していただいて、コメントいただいて感謝です。
なかなかいい映画でしたよね♪
Posted by jester at 2009年02月23日 17:58
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