2007年11月18日

4分間のピアニスト 

深い絶望の果て。
生きる力さえなくしてしまうほどの闇。
それでも、人に希望はあるのだろうか。

わずかな支えを手に立ち上がり、
一歩一歩
この寂しく荒れた道をたどっていく。

そこにはなにかが
待っていてくれるのだろうか。


このところ、音楽がテーマになっている映画を何本か見ていますが、「4分間のピアニスト」は「Once ダブリンの街角で」に続いての佳作でした。

といっても「Once」のほうが貧しい普通の人たちの心の美しさを描いているのに対して、「4分間」のほうは、底辺の人たちの心の暗闇を描き、その微かな反映が真に価値あるものを輝かせるといった描きかたで、とても対照的。

4hun2.jpgまた、ピアノの天才が主人公という点では「僕のピアノコンチェルト」と似ていますが、「僕の」が子供向けのファンタジーなら、こちらはリアリティに満ち、ものすごく重い。


囚人にピアノを教えるヴォランティアをしているクリューガー(モニカ・ブライブトロイ)は、ピアノのレッスンを希望しているジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)と会うが、彼女の病的ともいえる暴力の発作に、冷たく部屋を離れる。

しかし歩き去ろうとするクリューガーの足を止めたのは、扉を閉じた部屋から流れてくる、ジェニーの弾くピアノの音だった・・・

精神的な疾患があるのでは?と思われるようなパニック発作を起こしたときのジェニーはまるで手負いの獣。

それと、彼女の紡ぎだす音楽の美しさはまるで別物のよう。


年のかけ離れた二人の無口な女が、音楽だけをその手段として危ういつながりを持つが、関係が深まるにつれお互いの傷口をこじ開けることになり、二人それぞれの悲しい過去が見えてくる・・・・

封印されていた過去の扉を開き、相手の心の琴線に触れるとき、その痛みを共感し、二人は次第にお互いを深く理解しあう。

暗い陰のなかで生きているような人々が登場するのに、見終わったあとは不思議な充実感があり、魂が美しい音楽で満たされたのを感じられます。

典雅なモーツアルトやベートーベン、シューベルトより、ジェニーの自己表現である、痛烈なこころの叫びのような演奏は、そういうものを「下劣な音楽」と言い放つクリューガーに受け止められるのか・・・

使われる音楽だけでなく、爆撃の音、ジェニーが机に刻んだ鍵盤をたたく音、サイレン、体育館のボールの音など、数々の音が、心に響く音として効果的に使われている。

4hun.jpg驚くべきなのは、ジェニーを演じたハンナー・ヘルツシュプルングの演技。
オーデションで残った新人らしいけれど、すごい迫力でした。
薄い色の瞳を怒りでぎらぎらさせて、体中から立ちのぼる激しい敵意とともに、鍵盤にたたき出す「自分」の演技にしびれました。

しかし、骨太のいかにもドイツ人らしい体格で、この人に殴られたら痛いだろうな・・・(殴

それからクリューガー役のモニカ・ブライブトロイも素晴らしかった。
寡黙で頑固で孤独な老女を見事に演じてました。


たまに「現代音楽」を聴きに行くと、正直jesterには理解不能で疲れることが多いのですが、ジェニーのコンサートは聞いてみたいです。

力あふれる4分間の演奏でした。





posted by jester at 09:53| Comment(10) | TrackBack(11) | や行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
現代音楽って理解不能ですよねっ;笑
でもそれ以上に自己表現の多彩な面白さを感じてしまったりもするんです。
私には現代音楽の免疫があったから、ラストは「衝撃的」というより、話の流れ的には自然だった気もしてます。
ジェニーのピアノの吹替えは日本人ですよね。結構嬉しかったりしました。
Posted by シャーロット at 2007年11月19日 16:23
シャーロットさん、いらっしゃいませ〜 ご訪問うれしいです♪

>現代音楽って理解不能ですよねっ;笑
でもそれ以上に自己表現の多彩な面白さを感じてしまったりもするんです。

そうですね〜
面白いなとおもいつつも、ずっと聞いてると疲れちゃうこともあります。
所詮はなれの問題なんだろうなあと思いますが。

>私には現代音楽の免疫があったから、ラストは「衝撃的」というより、話の流れ的には自然だった気もしてます。

うんうん、あれで、用意していた曲を弾いたら、かえって不自然ですよね。
あそこに持っていったから、あれまでの二人の葛藤が生きた気がします。

>ジェニーのピアノの吹替えは日本人ですよね。

なんですってね〜〜
ビックリしました。そういう形で日本人が参加していたなんて♪
Posted by jester at 2007年11月19日 16:34
こんにちは〜
TB&コメントありがとうございます。

>ジェニーの自己表現である、痛烈なこころの叫びのような演奏

もう、あの痛烈さにノックアウトされまくりでした〜
ジェニーって凶暴だし、ピアノ演奏も激しかったですけど。
ジェニーとクリューガーが少しずつ寄り添っていく流れは、とても静かに感じられました。
私は、鑑賞後は真っ直ぐにHMVに向かいました。このサントラを試聴したくて・・・。結果、もちろん購入しまして。
今も聴きながらコメントしているところです♪
Posted by となひょう at 2007年11月19日 20:18
となひょうさん、いらっしゃいませ♪
コメントありがとうございます!うれしいです♪

>ジェニーって凶暴だし、ピアノ演奏も激しかったですけど。

あそこまで凶暴だと、「どうしてなんだろう」って不思議に思いますよね。
それだけのトラウマがあるのだろう、って思います。

>ジェニーとクリューガーが少しずつ寄り添っていく流れは、とても静かに感じられました。

ほんとに少しずつなんですよね。手を差し伸べあったりしなくて。
クリューガーも「興味があるのは音楽だけよ」なんていいはなって、本当は傷つくのを恐がっていたのかもしれませんね。

>私は、鑑賞後は真っ直ぐにHMVに向かいました。このサントラを試聴したくて・・・。結果、もちろん購入しまして。
今も聴きながらコメントしているところです♪

おお〜 私はまだ買っていないんですよ。
このところ、映画館で鑑賞後即CD買い、っていうのが続いていたので、今回は2回目鑑賞後くらいに買おうかなと。
でも、とても良かったですよね〜
やっぱりすぐに欲しくなってきました(汗)。
Posted by jester at 2007年11月19日 20:46
コメント有難うございました。

やっぱり見た人は凄いと思いますよね、この映画。ハンナさんは素顔はとっても可愛い澄んだ目をした少女なんですよね、ビックリしました。
演奏も演技も凄い迫力でした。
サントラも欲しいけど買ってない、そんな映画が沢山溜まってます。
Posted by くまんちゅう at 2007年11月19日 22:38
くまんちゅうさん、いらっしゃいませ〜 ご訪問うれしいです♪
早々のTBもありがとうございました。

>ハンナさんは素顔はとっても可愛い澄んだ目をした少女なんですよね、ビックリしました。

そうなんですね〜 びっくりです。
あの迫力が演技なんてビックリ。

>演奏も演技も凄い迫力でした。
サントラも欲しいけど買ってない、そんな映画が沢山溜まってます。

最後のシーンは日本人の方が吹き替えているそうですが、彼女の演奏もすごかったですよね。
わたしもやっぱりサントラ買おうかまよってます。
Posted by jester at 2007年11月20日 07:44
jester さん、こんにちは。
音楽映画の秀作がたっくさんで嬉しいですね。
ピアノの音色はやっぱり美しいー。
ピアニストものにハズレなし。
(まぁ、これは勝手につけられた邦題で、彼女はピアニストというんでもないけど)塀の中のピアニストというアプローチがよかったです。
Posted by かえる at 2007年11月23日 09:59
かえるさん、いらっしゃいませ〜 ご訪問うれしいです♪

>音楽映画の秀作がたっくさんで嬉しいですね。

ほんと、うれしいです!!

>ピアノの音色はやっぱり美しいー。
ピアニストものにハズレなし。
(まぁ、これは勝手につけられた邦題で、彼女はピアニストというんでもないけど)

そうそう、「戦場の」「真夜中の」「4分間の」って、○○のピアニストっていう題つけるの、日本の配給会社の人って好きですよね。というか、安易な題付け・・・

Posted by jester at 2007年11月23日 19:12
こんばんは。
骨太のいかにもドイツ人らしい体格、ってほんとにそうでした。それがこの物語にはぴったりで、なよっとした美人じゃあ成り立たない体育会系の映画だったのに驚きました。
Posted by ジョー at 2007年11月23日 23:16
ジョーさん、いらっしゃいませ♪

>骨太のいかにもドイツ人らしい体格、ってほんとにそうでした。

日本映画ではああいう女優さんはあまりヒロインにはならないでしょうねえ・・・
反抗的態度、なら「えりかさま」とかがむいてるかもしれませんが・・・

>それがこの物語にはぴったりで、なよっとした美人じゃあ成り立たない体育会系の映画だったのに驚きました。

でもそれがかえって、彼女の心の純粋さみたいなものを浮き立たせていたような気も致しますが・・
Posted by jester at 2007年11月24日 07:58
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

「4分間のピアニスト(VIER MINUTE)」映画感想
Excerpt: ドイツアカデミー賞受賞作でピアニストがテーマの映画とあっては見ないわけには行か
Weblog: Wilderlandwandar
Tracked: 2007-11-18 18:53

4分間のピアニスト
Excerpt: 誰しも圧倒されるであろうたった4分間の迫力の演奏・・・
Weblog: シャーロットの涙
Tracked: 2007-11-19 16:24

4分間のピアニスト
Excerpt: 「4分間のピアニスト」 VIER MINUTEN/FOUR MINUTES/製作
Weblog: 映画通の部屋
Tracked: 2007-11-19 20:15

『4分間のピアニスト』
Excerpt: Four Minutes@シネスイッチ銀座、クリス・クラウス監督(2006年ドイツ) つながれたピアニストが織り成す魂の演奏! ピアノ教師として刑務所にやってきたクリューガー(モニカ・ブライブトロイ..
Weblog: マガジンひとり
Tracked: 2007-11-22 23:26

「4分間のピアニスト」:亀島橋バス停付近の会話
Excerpt: {/hiyo_en2/}医療福祉専門学校ってなに? {/kaeru_en4/}はりとか、お灸の先生を育てる学校らしいぞ。 {/hiyo_en2/}じゃあ、私の肩こりも診てほしいなあ。 {/kaeru..
Weblog: 【映画がはねたら、都バスに乗って】
Tracked: 2007-11-22 23:36

『4分間のピアニスト』 Vier Minuten
Excerpt: ギャップが際だたせるもの。孤高の美。 刑務所で受刑者たちにピアノを教えるクリューガーは、類い希なる才能の持ち主ジェニーに出会う。小脇に抱えては持ち運べない楽器、ピアノ。それは、音響設備の整った音..
Weblog: かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
Tracked: 2007-11-23 09:54

映画 『4分間のピアニスト』
Excerpt: 『4分間のピアニスト』  2006年 原題 : VIER MINUTEN 監督 : Chris Kraus この映画の登場人物には、 様々なバックグラウンドがあって、 そこを、はっきり言い切ってしま..
Weblog: Death & Live
Tracked: 2007-11-25 19:54

4分間のピアニスト
Excerpt: かつて、フルトヴェングラーから認められた優秀なピアニストだったクリューガーは、刑務所で受刑者たちにピアノを教えていました。ある日、稀に見る才能の持ち主、ジェニーに出会います。彼女は、幼い頃から神童と騒..
Weblog: 日っ歩〜美味しいもの、映画、子育て...の日々〜
Tracked: 2007-11-27 07:29

映画『4分間のピアニスト』を観て
Excerpt: 95.4分間のピアニスト■原題:VierMinuten(英題:FourMinutes)■製作年・国:2006年、ドイツ■上映時間:115分■鑑賞日:11月24日、シネマGAGA(渋谷)■公式HP:ここ..
Weblog: KINTYRE’SDIARY
Tracked: 2007-12-30 00:00

【2008-1】4分間のピアニスト(原題:VIER MINUTEN)
Excerpt: 人気ブログランキングの順位は? 類まれな才能を持ちながらも、 人生は過ちばかり 自由をつかむために 彼女に残された演奏時間は、 たったの4分間だった──。 弾く時だけわかる..
Weblog: ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
Tracked: 2008-01-07 22:31

4分間のピアニスト
Excerpt:  刑務所でピアノを教えることになったトラウデは、ふとしたことから天才少女ジェニーと出合う。  受刑者の中でも一番どうしようもない問題児だったが、トラウデによってピアノを通じ向上心に目覚め、ついにはピア..
Weblog: シネクリシェ
Tracked: 2008-01-14 11:47
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。