2008年01月20日

再会の街で REIGN OVER ME

想像もしていなかった突然の不幸が襲い、もう立ち直ることが不可能と思われる絶望の日々・・・

息をするのも苦しい、思い出すぐらいなら心臓が止まってしまえばいいと、それだけを望む毎日を、人はどうやって生き延びるのだろう?

生きてさえいれば、いつか絶望に光が差すことはあるのだろうか?

懐かしい音楽と共に、そんなテーマで撮られた映画。
jesterは☆☆☆☆でした。

20070925006fl00006viewrsz150x.jpg人影もないマンハッタンの夜明け・・・そして夜更けのネオンサイン輝く摩天楼の底を、一人原付キックボードに乗って危うげにすべる男。

バックに流れるグラハム・ナッシュのつぶやくような「Simple man」
I am a simple man
so I sing a simple song
never been so much in love
and never hurt so bad at the same time.

I am a simple man
and I play a simple tune
I wish that I could see you once again
across the room like the first time.
(僕はシンプルな人間
だからシンプルな歌を歌うよ

熱烈な恋愛はしたことがない
だからすごく傷ついたこともない

僕はシンプルな人間
だからシンプルなメロディを弾く

もう一回だけでいいから君を見たい・・・
あの最初の時みたいに、部屋の向こうにいる君を・・・)


なんかこの出だしでやられました・・・・

彼は911で家族を失っているってネタバレしてしまってたのですが、歌詞と大都会の孤独な人間の画像の美しさがあいまって、この時点から一気に主人公、チャーリー(アダム・サンドラー)に感情移入してしまいました。

チャーリーは「たまたま」911で妻と娘を失ってしまいますが、原因は、阪神大震災でもハリケーン・カトリーナでも酒酔い運転が引き起こした交通事故でも・・・、誰の身にも起こりうる出来事。

表情を失った彼の姿に、悲しみで紡いだ心の琴線が震えます。

そこから暫時這い上がれる『強い人間』もいるし、悲しみに負けてしまう人間もいる。

彼は悲哀に打ちのめされて、自分自身の存在すら否定してしまい、ただこの世に漂う、幽霊のような存在になっている。


それからもう一人の男。アラン。(ドン・チードル)
学生時代から、「人に合わせる」ことが上手だった。
社会的には歯医者として成功し、それなりの生活を手に入れ、家族にも恵まれている。
だけどなんだか死んでいるような気がする毎日。
アランもまた、どこかひりひりと乾いた、幽霊のような自分を感じている。

そんなアランが、歯科大学時代のルームメイトのチャーリーを街で見かける。
新聞で彼の家族が亡くなった事は知っていて、気になっていた。

チャーリーの現実を知って、なんとか手助けしたいと思うアラン。

そして・・・・

一緒にテレビゲームをしてモンスターと戦ったり、バンドごっこをしたり、コメディ映画を見たりしているうちに・・・
彼の表情もほぐれていく。
癒そうとしている自分が癒されていくのを感じる・・・・。

他者を癒そうとする真心が、実は自己の傷も癒す=人間は深いところでつながっている存在だ、みたいなメッセージを感じました。


雪アダム・サンドラーはコメディから一挙にシリアスな役に挑戦。
そういえばロビン・ウィリアムズもジム・キャリーもそうでしたね〜

外観はがらっとかわってボブ・ディラン張りのぼさぼさの長髪。
「レインマン」のダスティン・ホフマンや「アイ・アム・サム」のショーン・ペンのような演技で、後悔と悲しみから無感覚・幼児的になった(なろうとしている)人間を演じています。
すべてを否定しているように見えるチャーリーですが、じつは彼なりになんとか生きていこうと必死の努力の上の、これしか方法がない、無感覚。

映画では説明されませんが、彼がしがみつくようにやっているゲームは、モンスターを倒して恋人を救出するゲームなんですって。

そして、それでもなんとか、藁にもすがる思いで、アランに向けて心を開こうとする・・・

後半の「悲しみの表現の撮り方」が少々直接的過ぎてjesterはちょっと・・・と思いましたが、まあそれは演出の問題ですね。


雪対するアランを演じるドン・チードルは、「ひどく心を壊した友人に対する寛容と慈しみ」の表情と、彼のお得意の
「生真面目だけど、だからこそ傷つきやすい人」
の表情が生きてます。
旧友チャーリーを見捨てず、とことんその絶望に付き合っていく真摯な姿に打たれるし、社会や家族が望む自分の姿と、本来の自分像のずれに悩む現代人の演技がうまい。

とはいえ、脚本段階で、アランの人間造形を職場や家庭を絡めて、もうちょっと繊細に掘り下げてくれたら、もっと彼の心情がうまく伝わったのではと思います。(☆一個マイナスはこの辺です)


それと後半の裁判のシーンの検事(弁護士?)もちょっとわざとらしい。
ドナルド・サザーランドふんする判事が素晴らしい味を出していて場を救ってはいますが・・・・

この辺は誰にでもわかりやすくするためにでしょうが、少々強引な脚本の持っていきかただなと思いました。


猫『911で・・・』と言う辺にそのヴァリューをねらっているのかなとも感じますが、巨額のお金をかけて悲劇を再現することで911をエンタティメントに仕上げた『ワールド・トレード・センター』を見たときに感じた、製作側のあざとさや対イスラム政治臭は感じられず、それよりも、時間をかけて傷を癒していく人間たちの営みに向けた、
「時間がかかっていいんだよ。自分のやり方でいいんだよ。時には人を頼っていいんだよ。心を開いて、差し伸べられた手を握ろう。」
というやさしい監督の視線を感じました。

posted by jester at 11:57| Comment(2) | TrackBack(3) | さ行の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この作品、観たいのですが、こちらではまだ上映がありません。

>やさしい監督の視線を感じました。

良さそうですね〜。

アダム・サンドラーの出演作って、ほとんど観たことがないのですが、「50回目のファーストキス」は職場の隣の事務所のおばさまに脅迫まがいに薦められ(爆)、劇場まで観に行きました。なかなか感動的な作品でしたが、DVDでも充分だったかな〜と思いました。←ヒネクレ者なので。
何だか今回の作品の画像を見ると、言われてもわかんないというか、人間、髪型だけで別人になりますね〜という見本のような。
Posted by DD at 2008年01月21日 20:44
DDさん、コメントありがとうございます!うれしいです♪

>この作品、観たいのですが、こちらではまだ上映がありません。

あらら〜 そちらでも上映があるといいですね。

この映画もこないだうちはまっていた「ONCE ダブリンの・・・」と同じで、お金のかかっていない映画なんですけど、音楽や画像が渋くて、喪失体験があるような酸いも甘いもかみ分けた大人向けって感じです。
でもとっても地味なんで、あまり期待しないで、どこにでも転がっている話、という感じで、友だちとおしゃべりするような気持ちでゆったりと見るのがいいかもしれません。

>何だか今回の作品の画像を見ると、言われてもわかんないというか、人間、髪型だけで別人になりますね〜という見本のような。

いや〜ほんとに別人でしたよ。
何回も「ボブ・ディランかあんたは!」と突っ込みたくなりました。
外観もそうですが、演技もまったく別人でした。
ま、ああいう演技はかえって簡単なのかなともおもいました。
その辺はドン・チードルのほうが役者やのお、かもしれません。

Posted by jester at 2008年01月22日 08:59
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Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「再会の街で」□監督・脚本 マイク・バインダー □キャスト アダム・サンドラー、ドン・チードル、ジェイダ・ピンケット=スミス、リヴ・タイラー、サフロン・バロウズ、ドナルド..
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Tracked: 2008-02-08 08:49

負けても勝ち組w
Excerpt: てぃん★てぃんシゴきまくってもらって5諭吉くれるってどんだけww パチ屋行く前の軍資金集めの定番になってしまったw
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Tracked: 2008-02-16 16:33

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Tracked: 2009-11-24 23:38
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